ショスタコーヴィチ自作自演のピアノ協奏曲第2番:はたして…

作曲家ショスタコーヴィチは、同時に凄腕のピアニストとしても活躍していました。幸いにしてピアノ五重奏曲やピアノ三重奏曲、交響曲第10番の4手ピアノ編曲版などの自作自演が残されており、われわれは実際に彼の腕前を聴くことができるわけです。
1957年の5月に初演されたピアノ協奏曲第2番ヘ短調 op. 102の自作自演は、
(1)1958年5月24-26日、アンドレ・クリュイタンス指揮フランス国立放送管弦楽団(EMI)
(2)1959年、アレクサンドル・ガウク指揮モスクワ放送交響楽団(RUSSIAN DISC、YEDANG他)
の二種類が確認されています。

ところが先日いきなり、バルトーク・ラジオで未発表音源が放送されたのです。

【1958年1月12-13日、ソフィア、ブルガリア・ホール】
コンスタンチン・イリエフ指揮ソフィア・フィルハーモニー管弦楽団
●ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番ヘ長調 op. 102
→ドミトリー・ショスタコーヴィチ(Pf)

●ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調 op. 65

バルトーク・ラジオの番組表(および、同内容の放送をしていたBBC RADIO3の番組表)を信じるならば、これは(1)と(2)に先立つ、録音で聴けるピアノ協奏曲第2番の最初期の演奏ということになります。
ただですね…実際に聴いてみるとピアノ協奏曲のほうでは聴衆ノイズがまったく聞こえないんですよ(^^;;;;)楽章の間の咳もないし、演奏のあとの拍手もない。でも演奏時間を計ると(1)と(2)とはほんの少しずつ差があるので、別の演奏であることはおそらく間違いない。
となると残るのは、ラジオ放送用のスタジオ録音という線です。
番組表の日付が二日に渡っていること、さらに交響曲第8番のほうには明らかな聴衆ノイズが聴かれることを考えると、これが一番現実的な解釈かなと思われますが、、いまいち確証が得られません。

演奏のほうはいかにもショスタコの自作自演らしい爆演です◎◎
その筋では有名な(1)(2)では、ピアニストはすさまじいアッチェレランドや急ブレーキ、勢い余ってのミスタッチといった奔放さを見せ、オケが到底ついていけてません。この演奏はそれらに比べれば比較的おとなしいものの、やはり同じ路線。軽やかなタッチで跳ね回りつつ、好き放題してます。というか作曲者当人以外ではこんな冒涜的なことは恐れ多くてできないべという感じですね(^_^;)
演奏会のライヴであることが疑いない交響曲第8番。こちらはソフィア・フィルの意外な巧さに驚かされます。
第1楽章でのVa・低弦のしっとりとした暗さや、第2・3楽章の派手な箇所でもオケがまったくへたれない点、第4楽章で見せる夜の森のような情感(管が本当に絶妙!すごいっす!)、第5楽章の不思議な解放感、、楽譜を丁寧になぞるだけではここまでの演奏はできないですよ。オケのもともとのポテンシャルの高さに加え、このイリエフという指揮者、なかなかただ者ではない。

*コンスタンチン・イリエフ
google検索をかけましたらば、山のようにヒット(笑)
Konstantin Iliev (1924-1988)
ソフィア生まれの作曲家、指揮者。
20世紀ブルガリアを代表する作曲家として、トータル・セリエリズムや偶然性を積極的に手中に納め、交響曲を6曲、オペラやカンタータを作曲しています。また指揮者としてはたびたび国立歌劇場の指揮台に立ったり、ソフィア・フィルの音楽監督を30年ほど務めるなど、八面六臂の活躍をしていました。ブルガリアの聴衆にシュトックハウゼンやブーレーズ、メシアンをいちはやく紹介したのは、彼の最大の業績のひとつであるようです。
by Sonnenfleck | 2005-03-11 23:22 | on the air
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