ブリュッヘン/新日フィル ハイドン・プロジェクト 94→98→97

c0060659_73537.jpg【2009年2月15日(日) 15:00~ すみだトリフォニーホール】
●ハイドン:交響曲第94番ト長調 Hob.I-94 《驚愕》
●同:交響曲第98番変ロ長調 Hob.I-98
●同:交響曲第97番ハ長調 Hob.I-97
 ○アンコール 第98番~第4楽章
⇒フランス・ブリュッヘン/新日本フィルハーモニー交響楽団


実によかった。曲の練り上げが大変うまくいっていた。ゲネプロ時にブリュッヘンがこだわっていた箇所もちゃんと改善されてて、この日はプロジェクト中でも出色の出来だったんじゃないかと思います(残り二回行けない負け惜しみじゃないよ)。

この日の曲はしっとりとした第2楽章を持つものばかりでした。最近のブリュッヘンの好みを体感するにはうってつけであったと言えます。
最初の《驚愕》第2楽章は局所的に有名ですし、ハイドン音痴の僕もあそこの一撃に期待を込めていたんですけど、ブリュッヘンは歩みを速めてさっさと通りすぎてしまった。むしろ面白かったのはこの楽章の終結部分で、「楽しい」仕掛けで盛り上がった名残が旋律に残るところ、急に響きが色彩をなくすじゃないですか。今回はここの空虚なムードの醸成が見事としか言いようがなく、ケーキの蝋燭を吹き消した後に部屋の蛍光灯を点けるような居心地の悪さを巧妙に表現していました。あの一瞬は忘れがたい。。

ゲネプロ時、ブリュッヘンは英語だけどボソボソっとしゃべるので、彼が何を発言しているかというのはほとんど聴き取れなかったんです。でも、続く第98番第2楽章では確か「モーツァルト…」という単語が聴こえてきたのですよ。この文脈は結局謎のままですが、この楽章がどうやらハイドンにしては異例なほど(まるでモーツァルトのように!)エモーショナルな雰囲気を持っているというのは、ゲネプロで気がついたことです。ここの歌い口が実に優しく、同時に儚くてたいそうよかった。
第4楽章は渡邊氏のソロが出るまでが長い(フォルテピアノ自体は始まりからずっとトゥッティの中にいるんだけど、あの大きな編成の中ではほとんど浮かび上がってこないんですよ)。それにしても、楽章の最後へ突っ込んでいく推進力は往時のブリュッヘンそのままで、快感だったです。一番最後の渡邊氏のソロはコロコロとしてかわいらしい上に通奏低音のノリを忘れず慎ましやかで、それに先立つコンマスさんのソロのフラフラギスギスした様子とは一味も二味も違っていました。ノンヴィブラートのソロって緊張するんだろうなあ。。

休憩を挟んで、第97番の充実ぶりには驚かされました。
ほんの少しも躊躇することのない第1楽章序奏のアインザッツと、そこから開始される堂々としたステップ。いつまでも終わるようで終わらない第2楽章の夢心地。第3楽章はちょっぴり軍楽調で、それをロココな第4楽章が締める。
ゲネプロの公開部分で最も絞られていたのがこの作品でして、特に第2楽章のアーティキュレーションには何度も手が入り、旋律そのものだけでなくてフレーズとフレーズの関節部分にも細かな気配りがされておりました。1stVnから木管へ主導権が移ったり、その裏をかいてVcが浮上したり、この折り重なりが細部にわたって成立するように調整された練習の結果、驚くほど滑らかなのにきれいさっぱり脂分を落としてしまった極上の響きに。ブラヴォ。

+ + +

これにて2009年のブリュッヘン生体験はおしまい。
次は、第104番を振り終えて成田に向かうタクシーの中で「Brahms symphonies」と書かれたメモが事務局に手渡されるに一票。新日フィルならきっとやれます。
by Sonnenfleck | 2009-02-16 07:04 | 演奏会聴き語り
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