【2009年2月12日 シャトレ座】●ウェーベルン:《パッサカリア》 op.1 ●モーツァルト:3台のPfのための協奏曲ヘ長調 K242 →デヴィッド・ビスムス、ベルトラン・シャマユ、エドナ・スターン(Pf) ●R. シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》 op.40 ⇒アンドリス・ネルソンス/フランス国立管弦楽団 (2009年2月13日/france musique 生中継) 注目のアラサー指揮者、どんどん増えていますが、最近よく名前を目にするようになったのがラトヴィア出身のアンドリス・ネルソンス。ヤンソンスに似ているのは名前だけではなくて、どうやら音楽づくりも若いころのヤンソンスにちょっと似ている。いやそれどころか、それを上回る強引豪快なセンスを持った指揮者のようです。 ウェーベルンの《パッサカリア》で聴かれる豊かな起伏。急ハンドルを切るクルマの後部座席に乗っているみたいに、音の振幅から慣性を感じます。荒削りで強引だけど、こういうのもたまには気持ちいいよね。身体を動かすのが大嫌いな人間が言うのもアレですが、いかにもスポーツ的で爽快です。響きのブレンドに関しても、中間色より原色を隣同士に置いて鮮やかなコントラストをつくるのが好きみたい。たぶんフランス国立管もこういうやり方が好き。 モーツァルトは評価が難しい。繊細優美で陰翳の深いピリオド系演奏ばかり選んで聴いていると、こういうふうに素直で元気のいいモダン演奏からは土足で踏み込まれたような印象を受けてしまう。若い筋肉と汗と白い歯が見えますが、それゆえに時おり物凄く真実味のある深い響きになっていることもあって、綾倉伯爵のようになってしまった自分が情けなくもあり。 アラサー指揮者でピリオドな雰囲気を感じさせないのは、実は珍しいような気がします。特にこうしたクリスティアン・バッハ風の作品で。 休憩を挟んで《英雄の生涯》。何やら怪気炎が上がっているぞ。。 〈英雄〉の提示から苦笑してしまう。最初のウェーベルンもそういう気配があったんですが、このネルソンスという人はフレーズを「フレーズらしく」形作るのが好きみたいで、そのためには強引なデフォルメも辞さない。あちこちでテンポの伸縮が起こり、浮き上がらせたいフレーズにはほぼ必ず前置詞として物凄いリタルダンドが用意されています。。さらにわざとらしいくらいの低音特盛までやってのけますから。。コバケンなんてこれに比べたらかわいいものかもしれない。そんな演奏です。 唸り声までコバケンを凌がんとするレベル(!)でありまして、そういったスタイルで〈英雄の敵〉と〈英雄の伴侶〉が修飾されるのを聴いていますと、ハイティンク/シカゴ響がなんとノーブルな演奏であったかということまで思い至ってしまいます。 それにしても〈英雄の戦場〉のしつこいことといったら!この部分でスネアドラムや金管を前面に持ってきて極端に粘つかせると中期ショスタコみたいな味わいが出るというのがわかって、変に感激してしまった(笑) オケはよくこの世界観についてきている。。〈英雄の業績〉以降の、悪い油で揚げたアメリカンドッグみたいな様子には、この面白い指揮者の今後への期待も込めて、強くダメ出ししておきたいなあと思います。 ブラヴォとブーが飛び交う素敵なカーテンコール!
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