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BZB

BZB_c0060659_7232078.jpg【PHILIPS/462 123-2】
<ベートーヴェン>
●Vnのためのロマンス第2番ヘ長調 op.50
●同第1番ト長調 op.40
●Vn協奏曲ニ長調 op.61
→トーマス・ツェートマイアー(Vn)
⇒フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ

久しぶりに公式新譜が出たブリュッヘン(とツェートマイアー)ですが、そのモーツァルトを聴くに先だって、10年前に録音されている同じコンビのベートーヴェンを聴いてみましょう。

このベートーヴェンはロックなのかもしれない。ロックについて何も知らない僕がその表現を使っちゃいけないんであれば、このベートーヴェンは意図的に人を苛立たせるように設計してある、と言い換えてもいい。ツェートマイアーの音は(アタックも)ガサガサというよりガギガギしています。ヴァイオリンの音がガサガサ、というのは巧まずしてそのようになるケースが多いのでしょうが、彼はもっと積極的にガギガギしている。高貴な旋律は苛立たしくもスパイシーな姿に変容して、鼓膜を心地よく突き刺します。
第1楽章のきついアタックに気持ちよく傷つけられ、なぜか取り上げられたシュナイダーハン版カデンツァに酔い、第2楽章ではまったくヨーロッパを思わせない刺激的な香りにかどわかされます(これを聴くとほかの演奏が重いチョコレート臭を漂わせているみたいに思えてくるので不思議)。そして第3楽章では爆発的な毒気にあてられる、というわけで、自分のようにこの曲の高貴さに眠気を感じてしまう聴き手にとってこうした刺激は堪りません。味覚鈍麻がナンボのものでございましょうや。

翻ってブリュッヘン/18世紀オケは?ここでのブリュッヘンはツェートマイアーへの協力体制があまりにも磐石で、18世紀オケの音もいつもよりずっと線が細く、また瞬間沸騰力が上昇している感じ。よく聴かれるような静かで厚みのある響きよりも、やりすぎてしまったときのアーノンクールのような雰囲気が少しだけあります。
それでも夜のような第2楽章の時間は独特。両端楽章はツェートマイアーに主導権を奪われても、このラルゲットだけは18世紀オケ木管隊の静謐な音が支配している。

+ + +

本日の「ハイドン・プロジェクト」最終公演を聴きにいくことはかなわないので、皆さんのレヴューを拝読して、伝説の最後を見届けたいと思います。
by Sonnenfleck | 2009-02-28 07:29 | パンケーキ(19) | Comments(0)
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