シロップ煮クリーム添え

c0060659_6304726.jpg【Astree/E 8674】
<ヘンデル>
●アリアとカンタータ集
 《ジューリオ・チェーザレ》、《リナルド》、《アルチーナ》から、
 カンタータ《炎の中で》 HWV170から
 カンタータ《決して心変わりしない》 HWV140から
→マリア・バーヨ(S)
⇒スキップ・センペ/カプリッチョ・ストラヴァガンテ

ヘンデルから気持ちの離れた時期に買い求めて、そのままにしていた一枚。スキップ・センペ(五月に)来日記念に取り出して聴いてみましたら、マリア・バーヨの声の魅力にすっかり当てられてしまった。。これまでに聴いてきた女声のヘンデルの中では、彼女のうたが最もしっくりくる。
上質のクリームは味覚だけでなく触覚にも作用する術を心得ているものだけど、こうして艶かしい触感にデコレイトされたヘンデルを味わうのは格別の快楽です。シロップ煮みたいにだらしなく寝っ転がってこういうのを聴いていると、自分は音楽の快楽主義者でホントによかったなあと思いますねえ。凄まじい美声にすっかり気持ちよくなってしまったわけ。

たとえば最初のクレオパトラのアリア〈難破した船が嵐から〉。このナンバーに特徴的なサクサクしたリズム感やポップな佇まいは比較的簡単に犠牲にしてしまって(というか伴奏のセンペたちにすっかり任せきって>自己主張しまくってるセンペの通奏低音には大いに萌えます)、そのかわり、ただならぬ艶っぽい声、というよりも吐息みたいなものを押し付けてくるのです。これではチェーザレでなくともコロリといってしまうよ。。あんまり書くと変なTBが飛んできそうですが(笑)

それから〈私を泣かせてください〉ですよ。これがまた輪をかけてすごい。
有名になってしまったアリアですが、ここに収められた歌唱の前ではほかの演奏は木偶の坊のようにしか聴こえませんて。バーヨはメロディと声の美しさだけに寄りかかるんではなくて、呼吸のような抑揚を自然に取り入れてゆったりとした官能を実現させていますが、これにはセンペの好みもずいぶん反映されているんじゃないかしら(引き伸ばされて崩落寸前のリズム、大きめに捉えられたバス・ヴィオール、そしてハープとキタローネの有機的な感触)。ことにあのラモーを聴いたあとではそのように思います。

そのしっとり美人から一気に萌えボイスに変身してしまうのが、カンタータ《炎の中で》。生身の女性というよりも、オタク保守本流のマイスターたちが追い求めるような、存在しようもない二次元系の魅力をヘンデルから引き出してしまった手腕には仰天するしかありません。
いや、何を書いてるかわけがわからなくなってきましたが。

それでもセンペ目当てに聴きたいのよ!という方は、やはり《ジューリオ・チェーザレ》から〈私にお慈悲を下されないのであれば〉を聴いて、驚愕の重苦しいハーモニーに浸ってください。

+ + +

ググったらちょうど1年前に来日してるじゃないですか。しまったあ。
by Sonnenfleck | 2009-03-12 06:43 | パンケーキ(18)
<< 自家発電的エコロジスト ハーディング/新日フィル 第4... >>