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ロスバウトに固有速度と猫を発見する

ロスバウトに固有速度と猫を発見する_c0060659_8361018.jpg【VOX/CDX2 5518】
●ブルックナー:交響曲第7番ホ長調(ハース版)
⇒ハンス・ロスバウト/南西ドイツ放送交響楽団

歩くのが速いほうです。ぜんたいクラヲタって歩くのが速い人が多いような気がしますが(笑)
拙宅から最寄の駅まではだいたい徒歩10分くらいでありまして、通勤時などは多くのおっさんを追い越しながら歩いていくのが気持ちよかったりもします。おっさんたちを観察するとそれぞれ独自の歩行速度を堅持しているのがよくわかりますが、さらにそれが完璧なインテンポ、微妙なルバートつき、駅に向かって強烈なアッチェレランド、などと色々な解釈を備えているのも面白い。

で、ハンス・ロスバウトが50年も前に録音した快速ブルックナーが、何度聴いても僕の歩行する拍とぴったり合ってしまうのでしたよ。驚き。
これまで注意してロスバウトを聴いてきたわけじゃなくて、このCDも(たぶん)名古屋のピーカンファッヂに転がっていたのを手に入れただけなんだと思うんだけど、運命的なものを感じる。個体によって時間の流れの感じ方は微妙に違うだろうから、この演奏を皆さんに等しくオススメすることはしません。第1楽章なんかちょっとコソコソしすぎだろうと思われる部分もあるし(ただしそのぶん第3・第4楽章とのバランスはピカイチ)。

自分が来てほしいところにちゃんと来てくれる第2楽章について、言葉を使って改めて説明するのは大変に難しい。僕はベイヌムのブルックナーも好きなので、そのへんに共感いただける方にはオススメかも、というくらいのことしか書けません。
ただ、指揮をしているのがロスバウトだからという変な色眼鏡でこのディスクを見ないでほしいという、その一点はわかっていただきたいのです。ロスバウト=ゲンダイオンガクぶりぶりというレッテルに従って、ブルヲタ守旧派からは白い目で見られ、片や色物探索班からは痛くもない腹を探られ、猫のようにしなやかなこの演奏の価値は不当に貶められてきたんじゃないかという気がしている。もっと単純に聴かれていい演奏のように思うんですがね。

録音は一応ステレオ。ときどき左右に揺れる。
by Sonnenfleck | 2009-06-21 08:37 | パンケーキ(19) | Comments(2)
Commented by pfaelzerwein at 2009-06-21 15:10 x
ロスバウトの演奏は当地のラジオでは今でも時々流されます。それでもあまり馴染みがないという人が殆どです。この録音、恐らくバーデンバーデンのラジオスタジオでの制作と思いますが、ある程度予測出来ます。もしくはラジオで耳にしているかもしれません。

私の興味は、なぜ七番が八番などに比べてヴァーグナー風の解釈しか許さないかという事で、もちろん曲の成り立ちも含めて、それを示す満足出来る演奏解釈に出会った事はありません。その意味から比較的興味のある録音のような気がします。
Commented by Sonnenfleck at 2009-06-22 20:44
>pfaelzerweinさん
ロスバウトが今も生きづいているというのは、なかなか日本にいるとイメージしづらい状況です。放送オケというのは面白い存在ですよね。
それにしても、そう。そこなんです。この演奏はあまりにワーグナー的でないので可笑しくなってしまうくらいですよ。威圧感なんか全然ないし、図体が小さいので響きがのたくる様子もむしろしなやかですし、ワーグナーよりずっとメンデルスゾーンに似た軽やかな佇まいですね。
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