スティーヴン・スローン指揮都響:「消え入る」音

【2005年3月19日(土)14:00〜 <作曲家の肖像>VOL. 55/東京芸術劇場】
●ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調 op. 65


いてもたってもいられなくなり、当日券で都響を聴きに行きました。
芸劇の長いエスカレータを登りきったロビーに、ベルティーニの逝去とプログラムの変更を伝える「急告」の張り紙。本来、この演奏会では前半に同じ作曲家の喜歌劇≪モスクワ=チェリョームシキ≫組曲が予定されていましたが、都響のサイトにもあるように、音楽監督の死を悼み、交響曲第8番のみの演奏となりました。それに合わせて料金が全席種半額(こんなことは初めて体験します)。

入場するとクローク近くにベルティーニの遺影と白い献花。頭を垂れて黙祷する方もおられました。
団員が入場する前、都響の副理事長氏がマイクを持って現れ、一連のニュースを伝えます。今日の曲目変更は、ベルティーニの弟子であったスローンと都響側が急遽話し合った末に決定した模様。重苦しい雰囲気が会場を満たします。

冷たい弦の響きで始まる第1楽章。音のあるところよりも音もないところの方が大切なんじゃないかと、今日は間違いなく思いました。減衰し拡散する音を注意深く整理する指揮者。オケもそれを認識し、中間部で盛り上がるところでも不自然な肥大化を避けてきりりと引き締まった響きを造り出します。
第2、3楽章は、やろうと思えばいくらでもあざとく、ケレン味たっぷりにできる箇所です。しかしそうはしない。都響というオケは、互いの音を聴き合うというアンサンブルとして最も大切なことをきちんと守ることのできる団体ですので、合奏を聴く妙味ここに極まるという感じです。奇を衒った爆音や極端なテンポ変化は一切なし。第3楽章のTpソロ、ブラヴォー。
この演奏の要は第4楽章であったと思うわけです。薄い更紗を幾重にも重ねたような繊細な音で痛切な歌を奏でるオケ。それを邪魔せず、的確な拍節指示を与える指揮者。浮き上がることよりも消えることを重視する今日の演奏には、それにしてもじんときました。
そして明るい和音を残してふわりと消える第5楽章のコーダ。沈黙。満ち足りた静かな拍手。
by Sonnenfleck | 2005-03-19 23:30 | 演奏会聴き語り
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