【DGG/474 377-2】
<ワーグナー> ●歌劇《タンホイザー》序曲 ●舞台神聖祭典劇《パルジファル》 第1幕への前奏曲、第3幕からの組曲(アバド編) →スウェーデン放送合唱団 ●楽劇《トリスタンとイゾルデ》第1幕への前奏曲、愛の死 ⇒クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 先ごろ、熱烈にワーグナーが聴きたくなって自室のCDラックを見たのですが、全曲版を除くとクナッパーツブッシュ、クレンペラー、ゴロヴァーノフ、テンシュテット、、のラインナップにうんざりして、アバドのアルバムを買いに走ったのであります。 最初の《タンホイザー》序曲からしてそれはそれは涼やかな音響が聴こえてきて、これは間違いなく自分の心性に真っ直ぐヒットする感じでありました。クレンペラーなんか「上等々々、むしろ俺様が救済してやろっか」みたいな風だし、テンシュテットは重たくてエロだし、ゴロヴァーノフはCCCP金管がきつくてそれどころではないし。 ベルリン・フィルというハイパーオケを手にしつつ、決して力押しをしないので(アバドの他の録音も総じてこういうところがあるのですが>モーツァルトの交響曲集とか)この指揮者の呼吸に合わない人はたぶん何度繰り返し聴いても受け付けないと思う。HMVの評価が微妙なのもちょっとは頷けるところですが、この、乳白色と透明感の両方を実現する音響の心地よさはかけがえのないものです。まあつまり、夏休みに氷を浮かべた薄いカルピスみたいなね。 《パルジファル》からの抜粋はさらに素敵であります。 決定的に胡散臭いテキストを自分で書いて、あろうことか思い切り官能的な音楽を付けたワーグナーの「舞台神聖祝典劇」が、聖書正典に基づくフランツ・シュミットの超真面目なオラトリオよりもずっと真摯に聴こえるのはどうしてでしょうね。晴朗なアバドの音楽づくりがそのように思わせるのか。 〈第3幕からの組曲〉は、たとえば寝しなに《パルジファル》に浸ってみたいと思うときなどにぴったりですね。鐘の音が厳格に鳴る場面はあれども、基本的には一面に花が咲いたような清冽な音楽が拾い集められていますから、ベルリン・フィルの超絶技巧によりアバドの意図した透明感が構築されていく様子を知るにはちょうどいい。どんなに衆人がアバド+BPOを貶そうと、量感もありつつ清涼感のあった彼らの音楽に僕は強く惹かれます。 最後の2トラック《トリスタンとイゾルデ》は、いまだビル・ヴィオラの水イメージに心を囚われている自分としては、ノーコメントとしか。。
by Sonnenfleck
| 2009-07-18 07:53
| パンケーキ(19)
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Comments(4)
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pfaelzerwein
at 2009-07-18 15:29
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ヴァーグナーの清涼感ですか。確かに上に並んでいる名前からすると鈍重な感じがしますね。アバドがクスマウルを呼んだのもシュヴァルベ、ブランディス、安永などのある意味融通の気かないカラヤンサウンドからの脱皮があった訳で、上のプログラムでの古い実践であるフルトヴェングラーの録音の方が遥かに清涼感溢れている事に気がつきます。
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Sonnenfleck at 2009-07-18 21:52
>pfaelzerweinさん
自分の手元にああいったラインナップが集まっていたという事実が面白いなあと思います。どの録音もその時々には素晴らしく響きますが、少なくともアバドのような造形は誰もやっていませんね。フルトヴェングラーとの共通点に関してはなるほどという感じです。
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ガーター亭亭主
at 2009-07-20 22:42
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このアルバムのパルシファルの、特に聖金曜日の音楽は、本当に奇跡が起きたようですよね。洗われるようです。
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Sonnenfleck at 2009-07-21 06:44
>ガーター亭亭主さん
まったく同感です。タンホイザーももちろん素晴らしいのには違いないんですが、パルジファルが始まると響きがさらに透明に清純になっていくのがわかりますよね。アバドのワーグナー・アルバム、金が出ているので今度は銀も作ってくれたりしないかなあと思ってまして、重くも厳しくもなくひたすらに軽いマイスタージンガーなんか、、聴いてみたいものです。
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