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平和な冷感

平和な冷感_c0060659_633157.jpg【DECCA(L'OISEAU-LYRE)/458 078-2】
<ヴィヴァルディ>
●6つのFl協奏曲集 op.10
→ステファン・プレストン(Fl)
●《調和の霊感》 op.3
→ジョン・ホロウェイ、モニカ・ハジェット、
  キャサリン・マッキントッシュ、エリザベス・ウィルコック(Vns)
⇒クリストファー・ホグウッド/AAM

[今度アルビノーニをちゃんと聴こう→その前にいちおうヴィヴァルディ聴いとこう]と思っていた矢先、kimataさんがダントーネ/アカデミア・ビザンティナの《調和の霊感》を取り上げていらして、久しぶりにこの曲集が聴きたくなったです。

それにしてもkimataさんもおっしゃるように新しい録音が生まれない曲集で、この手持ちのホグウッド旧盤は1980年の録音。一番新しいのは、一昨年リリースされたバンキーニ/アンサンブル415の抜粋盤だろうか。後期バロックの演奏シーンで声が主役になってから、このへんの弦楽協奏的レパートリーってすっかり古びてしまったような気がしますね。。ちゃっきちゃきの若手凄腕アンサンブルがいっぱいいる中で、この曲集にあえて降りてくる人たちなんかいないのかな。。

この曲集をホグウッドの演奏でしか知らないと言ってもいい自分でありますが、とても久しぶりにこのディスクを取り出して聴いてみると、いかにも大人しげで毒も害も脂もなく、退屈で清潔な表情をしているのに改めて吃驚します。
静音設計の掃除機みたいに赤ん坊を起こさないジェントルな通奏低音、絶対に表に出てこない内声、みんな判で押したように蒼ざめた音色をしている懐かしのヴァイオリニストたち、、窓の外の蝉時雨が漏れ聴こえる室内で、エアコンをガンガンにかけながら聴くにはちょうどいいのかもしれません。このようにひんやりと平和な時間になっておるのは、演奏のせいなのか、はたまた曲集の性格のせいなのか、、「ガンガンいこうぜ」な録音が(どうやら)いまだにリリースされていない状況を見ると、そのような肉食のスタイルが致命的に合わないテクスチュアなのかもしれません。ここに傲岸不遜な装飾が入ったり、ゴリゴリした撥弦系の通奏低音メンバーがいたりするのは、あんまり想像つかないもんなあ。

op.3-8 イ短調、3-9 ニ長調、3-10 ロ短調なんかは昔(一応)弾いたことがあるので、あるいは間近で弾かれているのを観察したことがあるので、いかにも懐かしく感じられます。いささかの破綻もなく紡がれていく、シンプルな通奏低音の音型。しかしコレッリとは様相が違って微妙に俗っぽいのが面白いッス。
by Sonnenfleck | 2009-08-06 06:36 | パンケーキ(18) | Comments(6)
Commented by yusuke at 2009-08-06 20:38 x
私もkimataさんと同じく「調和の霊感」、持ってませんでした(「ラ・ストラヴァガンツァ」はピノック盤がありました)。最近どれかの曲が単独で録音された、ということもありませんでしたっけ。とある曲集の「全曲盤」作りという作業の堅実さや教養主義っぽさ自体が、naiveのアレに象徴されるオサレなヴィヴァルディ受容と対極にあるものとして最近は忌避される傾向にあるのかな、という気もします。
以前お話ししたような気もしますが、コレッリのop.6も名曲の割に新しい録音少ないですよね。バンキーニ以降何が出ましたっけ…。
Commented by kimata at 2009-08-06 22:01 x
意外とみなさん持たれてないんですね、調和の霊感。
yusukeさんのおっしゃるように全曲盤というとカタログを埋める作業のようで嫌われるのかも。
このホグウッドの80年代の録音も怖いもの見たさで聴きたくなってきました。「判で押したように蒼ざめた音色」なんて・・・いまどきかなりそそります(笑)。
Commented by Sonnenfleck at 2009-08-07 10:14
>yusukeさん
一番新しいのは…と思って調べますと、バンキーニとほぼ同時期、2007年録音のラモン/ターフェルムジーク・バロックの抜粋録音がヒットしますが、ソロがエリザベス・ウォルフィッシュだったのでこれも推して知るべしというか(苦笑)
コレッリもop.5はコンスタントに新録音が出ているように思いますが、グロッソは同じ傾向、というかもっとひどい状態ですよね。リスナーにおける弦楽協奏曲の流行らなさは措いておくにしても、作曲家がこういった曲集の楽譜を12曲セットで出版していたことはもっと意識されてもいいと思うんですよ。。
Commented by Sonnenfleck at 2009-08-07 10:24
>kimataさん
カタログのほうはピノックとホグウッドで(そしてビオンディによって十分に)埋まっていますからね(笑) ダントーネを皮切りに、いつかお話ししたような「新古典主義的古楽」勢が動いている様子を聴いてみたいんですよ。オサレnaiveには密かに期待しているところではあります。
今の耳だと、むしろ一回りして往年のイギリス古楽がホットかもしれませんよ。このままではトリオ・ソネリーのラモーとか久しぶりに取り出しそうな勢いです。
Commented by balsamicosu at 2009-08-09 15:26 x
はじめまして。いつも拝見させていただいております。肉食系ではエウローパ・ガランテの音盤がありますよ。演奏も期待に違わずガンガンやっています。
Commented by Sonnenfleck at 2009-08-09 17:38
>balsamicosuさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
検索していて気になってはいました>エウローパ・ガランテ。バンキーニ/アンサンブル415の新譜を聴いていないので確定的なことは言えませんけれども、彼女たちのコレッリを聴いた上で予想すると、ビオンディたちの演奏はこの穏やかなop.3にあっては「唯一の肉食」である可能性が高いですよね。食物連鎖ピラミッドで考えれば、このディスクが店頭で見つかりにくいのは当然ですね(笑)
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