ロイヤル・オペラ・ハウス《兵士の物語》@新国立劇場(9/11)

【2009年9月11日(金) 19:30~ 新国立劇場中劇場】
●ストラヴィンスキー:《兵士の物語》
→アダム・クーパー(兵士)、ウィル・ケンプ(ストーリーテラー)
  ゼナイダ・ヤノスキー(王女)、マシュー・ハート(悪魔)
→ウィル・タケット(振付)
⇒ティム・マーレー/ソルジャーズ・アンサンブル・オーケストラ


うーん。《兵士の物語》は「音楽」劇じゃなくて音楽「劇」なんだなあ。この形で体験できてよかったなあ。ストラヴィンスキーの音楽だけ取り出して聴くのはもったいないのかもしれない。今回はバレエ形式の上演だったけど、ダンサーがちゃんと台詞まで担当したから「劇」のイメージは崩れないのです。

舞台上には劇中劇のように野外舞台のセットが組まれて、その周りを囲むテーブルには蝋燭が灯り、観客役の俳優たちが着席している。紫や緋、橙の多い色遣いはいかにも猥雑で、こってりと装飾されたセットがいやらしい光を反射している。オケピットもそのように装飾されて、楽員氏らも舞台の一部。

たった4人の登場人物である、進行役兼狂言回しのウィル・ケンプ、兵士役のアダム・クーパー、悪魔役のマシュー・ハート、そして王女様役のゼナイダ・ヤノスキー。彼らは(バレエヲタではない僕も認識せざるを得ない)強靭な筋肉でもって、ストラヴィンスキーの音を可視化していく。作曲家がたぶん死ぬような思いで五線譜に捕まえた空気が、何の苦もないかのように平然と可視化される様子は、音楽と音楽に関わる芸術家への痛罵であり、決定的な嫌味でもある。…にも関わらず、その可視化はとっても美しいかたちをしている!バレエはいつも音楽の上位にいたがる!

オリジナルの7楽器アンサンブルはあまり精度が高いとは言えなかったけれども、そのぶん、パイプをくわえた王女様のダンスは変ないかがわしさに彩られていたし、終劇の兵士地獄落ちは徹底的に乱雑でむしろ効果的であったと言えます。千秋楽に向けて練り上がったら却って面白くなくなるかもしれないな。
最後に、いかにもそれらしく火焔燃え盛る奈落からせりあがってきた悪魔のやりたい放題が、シンプルに可笑しかった。狂言回しを追っかけ回し、兵士を奈落に突き落とし、王女様を犯すポーズで笑いを起こし、、しかしこの幕切れって、悪魔側からしたらただの契約履行なんだよねえ。違反しようとしたのは兵士の方だし。

お客さんはバレエヲタっぽいおばさんが多かったけれども(バレエは本当にいつも肩身が狭い)、この「機能的な」幕切れに彼女たちはどんな思いを致すのだろうか。終演後にお仲間と、「見た!?マシュー・ハートの逆さゴキブリ戦法!健在ねえ!」とか言ってた人もいたが、一方クラヲタだって「1stVn汚かったなあ!」とか言い合ってるんだから、五十歩百歩なのか。
by Sonnenfleck | 2009-11-14 01:56 | 演奏会聴き語り
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