ハンス=マルティン・シュナイト指揮神奈川フィル:自信

【2005年3月29日(火)19:00〜 特別演奏会/ミューザ川崎シンフォニーホール】
●モーツァルト:ディヴェルティメントヘ長調 K. 138
●同:モテット《踊れ、喜べ、幸いなる魂よ》 K. 165
→臼木あい(S)
●ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調《田園》 op. 68


この演奏会に行った理由は
1、シュナイトの指揮を聴いてみたい
2、ミューザ川崎に行ってみたい
という二点であります。
クラシック招き猫の常連さんで、シュナイトの熱烈なファンの方がおられます。その方がお寄せになったシュナイト讃に思わず引き込まれ、いつか彼の指揮を聴いてみたいものだと思っていた矢先、今日の演奏会が。幸い当日券が出るようなので川崎に直行しました。シュナイトは1930年生まれの75歳。急逝したリヒターの後任としてミュンヘン・バッハ管の芸術監督を務めるかたわら、バイエルン国立歌劇場でも常任指揮者として辣腕を振るっていた人です。どうしてもっと有名にならないのかしらん。
川崎に降り立つのは実に2年ぶり。友人とともに二郎を食べに行って以来です。ミューザも今日が初体験。
内部は「かなり」複雑な造りです。オープンして一年経っていないせいか、客も係員も席を見つけるのに随分苦労している模様。僕はステージに向かって左上方の2階席を買ったのですが、そこからホール全体を眺めると地面と平行でない線がかなり目について疲れます(^^;)舞台の端と直角に交わる直線を引いても、線対称にならない。すみだトリフォニーのジェットコースターもすごいですけど、ミューザも負けてないですねー。

コンマスに続いて登場したシュナイトは丸っこい好々爺。ちょっとスヴェトラーノフに似てます。モーツァルトのディヴェルティメントと《踊れ、喜べ〜》の感想は割愛。今日は《田園》に絞って書きます。
結論から言いますと、、この指揮者はいま聴いておかなきゃだめです!!!!
最近の流行に反して、テンポは(ベームのように)まったり、そしてKbが3プルト。重心の座った音色が自然と支配的になりますが、かといって鈍重かというと全然そんなことはない。弦楽器、特にKbとVcの表現の幅を非常に広く設定し、出るところと抑えるところを自在に操ります。普通の指示が1〜5までだとしたら、シュナイトの出す指示は1〜100くらい広く、多彩なんです。ために第1、2楽章ではまさに木漏れ日のような微細な立体感が表現される。こういう「広さ」はノリントンやアーノンクールの演奏でよく耳にしますが、シュナイトはそれをあくまで「普通」の、昔ながらのモダンスタイルでやってのけます。でも考えてみたらこれができる指揮者って少ないですよね…。
白眉は第3楽章から。「農夫たちの楽しい集まり」がここまで泥臭く演奏されるのを聴いたことはありません。それまで比較的抑え気味だった低弦を一気に解放し、轟音とともにかなりの遅いテンポで<村の踊り>をやってのけます。椅子に腰掛けたシュナイトもこのときは指揮台を踏んで陽気にテンポ取り。中間部のHrソロ、ブラヴォー。
そして「雷雨、嵐」…最も堅いバチを手にしたティンパニが渾身のトレモロを叩きますが、悠然としたテンポを崩さず、決して下品・露悪趣味に落ち込まない。遠雷の静けさを描写するシーンの緊迫感は特筆ものです。ここではKbに非常に細かなキューを出しているのが見える。土台を千変万化させるから、この多彩な感触が生まれるんですね。第5楽章は天国的な高揚感をもって進みます。…おかしい。何もしていないように聞こえるのに…。西洋音楽は音のヒエラルヒーをどのように瞬間的に作りかえていくかというところに本質(のひとつ)があると思いますが、シュナイトはそれが完璧にできてしまっているんです。もうこれでしかありえない!と瞬間々々に思わせる手腕は凡百の指揮者には備わっていないもの。そして聴衆にそう思わせてしまう彼の「自信」…なんでもっと早くこの指揮者を聴かなかったんだろう◎◎

次の神奈川フィル登場は4月16日の定期演奏会。曲はブラ1(!!!!!!)です。たぶん彼の芸風とぴったり。ブラ1に必要なものは、間違いなく「自信」です。
by Sonnenfleck | 2005-03-30 00:20 | 演奏会聴き語り
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