【2009年10月11日(日) 16:00~ 東京オペラシティ】
●ベルク:4つの歌曲 op.2 ●シューマン:歌曲集《女の愛と生涯》 op.42 ●同:リーダークライス op.39 ○同:歌曲集《ミルテの花》 op.25 ~第24曲〈君は花のごとく〉、第1曲〈献呈〉 ⇒マティアス・ゲルネ(Br) ピエール=ロラン・エマール(Pf) 心から素晴らしいと思った。 ゲルネもエマールもライヴ初体験だったけれども、この二人の世界に、まったくもって完全に心酔してしまった。これが現代リートの最先端か。 オペラシティの豊かな音響は必ずしもリート向けじゃなかったかもしれません。 でもこの日の演目の前半部分、すなわちベルクの作品2とシューマンの《女の愛と生涯》は、テクストとその細部のディクション処理よりももっと感覚的な部分が大切な作品のように感じるので、ゲルネの発音が音響上聴き取りにくいのはそんなに問題ではなかった。テクストを落とし込んで展開を内包した彼の声質の微妙な変化と、こちらは聴き取りやすいエマールのクリアなタッチ、これらがお腹いっぱい味わえただけで、まずはとっても幸せ。 + + + ベルクに歌われる死への親しみ、冒頭の死によって深美に染められた世界―箱庭の中にこのあとの「女」を配置してしまおうという意図の鮮やかさには、目の眩むような思いがしました。ベルクからシューマンへのつるりとした推移に、観客が拍手を挿し挟むことができなかったのは当然のことだ。 《女の愛と生涯》は、自分には正直言ってシューベルトのデガラシみたいに感じられて、もしかしたらこの曲集はシューマンのベストではないかもしれないけれど、つまりその「物足りない分」がベルクの濃密な残り香によって補完されていたというわけです。 ゲルネはことさら女声に配慮したりすることなく、むしろ男声の深沈とした客観をグラデーションにして攻めるし、エマールはエマールで「シューベルトのデガラシ」内にシューマンらしい強力な和音を探し出して強調するし(終局の後奏はまったきシューマンのエッセンスであった!)、すっかり打ちのめされてしまった。 後半のリーダークライスは…。 こちらは作品の性格上、統一されたベルクの世界に入れ込むことができないのだろうし、前述のように雰囲気よりもテクスト解釈の方が優先されそうなので、ワンワンと鳴ってしまうオペラシティ3階では聴取に限界がある。それ以上に、休憩時間によって死の箱庭が裁断されてしまったのが無念だった。あの20分間が憎らしい。。あるいは1階席を取らなかった自分の行いを悔やむか。 + + + ロビーに溢れる業界の人々とは対照的に(ホントにどっちを見ても見覚えのあるセンセたちばっかり!)、普通の愛好家は決して多くはなかったような気がしました。もったいないなあ。。ともかく、終演後は抱き合って肩を組んで手をつないでとラブラブぶりを見せつけてくれた歌い手とピアニスト、今後の共演にも期待大と言わざるを得ません。
by Sonnenfleck
| 2009-12-23 07:52
| 演奏会聴き語り
|
Comments(2)
Commented
by
pfaelzerwein at 2009-12-23 14:22
「歌い手とピアニスト、今後の共演にも期待大」 ― しかしこうしたリート演奏会は殆ど開催されないでしょうね。どれぐらい生でやっているのでしょうかね。オペラ劇場のロビーとかマティネーとか音楽祭ぐらいですか。
0
Commented
by
Sonnenfleck at 2009-12-27 22:40
>pfaelzerweinさん
そうですねえ。お祭りデュオ、という側面は否めないですが、ゲルネがエマールに心酔しているような発言をしているので、今後ももしかしたら、、という気持ちがあります。ヴォルフが聴きたいです。
|
カテゴリ
はじめに 日記 絵日記 演奏会聴き語り on the air 晴読雨読 展覧会探検隊 精神と時のお買い物 広大な海 ジャンクなんて... 華氏140度 パンケーキ(20) パンケーキ(19) パンケーキ(18) パンケーキ(17) パンケーキ(16→) タグ
日常
クラヲタ
ショスタコーヴィチ
バッハ
旅行
のだめ
散財
モーツァルト
ラ・フォル・ジュルネ
ベートーヴェン
B級グルメ
ノスタルジー
ブリュッヘン
マーラー
演奏会
名フィル
アニメ
ストラヴィンスキー
展覧会
シューベルト
Links
♯Credo
Blue lagoon Blue Moon--monolog DJK Klassik DRACの末裔による徒然の日々 dubrovnik's dream ETUDE Fantsie-Tableaux Langsamer Satz Le Concert de la Loge Olympique minamina日記 mondnacht music diary~クラシック音楽~ Nobumassa Visione preromantique Rakastava SEEDS ON WHITESNOW Signals from Heaven takの音楽 Takuya in Tokyo Valenciennes Traeumereien Vol.2 Wein, Weib und Gesang ○○| XupoakuOu yurikamomeの妄想的音楽鑑賞とお天気写真 4文字33行 アリスの音楽館 アルチーナのブログ あるYoginiの日常 アレグロ・エネルジコ マ・ノン・トロッポ アレグロ・オルディナリオ あれぐろ昆布漁 いいたい砲台 Grosse Valley Note ウェブラジオでクラシック音楽ライブ 「おかか1968」ダイアリー 音のタイル張り舗道。 オペラの夜 おやぢの部屋2 音楽のある暮らし(そして本も) 音源雑記帖 ガーター亭別館 河童メソッド ギタリスト 鈴木大介のブログ きままにARTSダイアリー ヽ['A`]ノキモメンの生活廃棄物展示場 クラシカル・ウォッチ 古楽ポリフォニックひとりごと 心の運動・胃の運動 コンサート日記 さまよえるクラヲタ人 瞬間の音楽 素敵に生活・・・したい! たんぶーらんの戯言 ディオニュソスの小部屋 ドイツ音楽紀行 弐代目・青い日記帳 爆音!!クラシック突撃隊♪ブログ。 ♪バッハ・カンタータ日記 ~カンタータのある生活~ はろるど ひだまりのお話 ひねくれ者と呼んでくれ 平井洋の音楽旅 ブラッセルの風・それから ぶらぶら、巡り歩き ベルリン中央駅 まめびとの音楽手帳 萌える葦、音楽をするヒト もぐらだってそらをとぶ やくぺん先生うわの空 ユビュ王の晩餐のための音楽 横浜逍遙亭 よし のフィルハーモニーな日々 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010 & オペラとクラシックコンサート通いのblog リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」 りんごの気持ち.blog 六国峠@ドクター円海山の音楽診療室 私たちは20世紀に生まれた * * * CLASSICA Dmitri Dmitriyevich Shostakovich Pippo Classic Guide Public Domain classic WEBぶらあぼ クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~ クラシック・データ資料館 木曽のあばら屋 佐藤卓史公式ウェブサイト 柳の下 artscape ミュージアムカフェ 豊田市美術館 東京都現代美術館 川村記念美術館 * * * 管理人宛のメールはdsch_1906 ◆yahoo.co.jp までどうぞ(◆=@)。 以前の記事
2023年 07月 2022年 07月 2020年 07月 2019年 02月 2019年 01月 2016年 06月 2015年 09月 2015年 06月 2015年 02月 2014年 11月 more... 検索
その他のジャンル
ブログパーツ
記事ランキング
|
ファン申請 |
||