ピーター・ウィスペルウェイ 無伴奏チェロリサイタル@トッパンホール(10/23)

c0060659_16483251.jpg【2009年10月23日(金) 19:00~ トッパンホール】
●ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタ op.25-3
●アンリ・プスール:《あなたのファウスト》のエコー第1
●リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタ
●クラム:無伴奏チェロ・ソナタ
●コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ op.8
 ○バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番~サラバンド
⇒ピーター・ウィスペルウェイ(Vc)


トッパンホールは何年ぶりだろう。六七年は来ていないはずだから、内装なんかほとんど見覚えがないし、行き方も忘れてしまったので、飯田橋駅からの新ルートを新規開拓する。
ウィスペルウェイのパフォーマンスは、ショスタコーヴィチの協奏曲やバッハの無伴奏のディスクで耳にタコができるくらい親しんできたものの、何度かあったライヴのチャンスをことごとく逃してきたために、この日が初めての出会いとなったわけです。今年のLFJもこの人のチケットの争奪戦には加わらなかったんだよなあ。

正直に書くと、恐らく多くの人にとってのメインであり、僕もそのように考えていたコダーイからは、あまりいい印象を受けなかった。
今回の演奏は本人の10年前の録音に比べてボウイングに硬直が感じられる瞬間が多く、それによって確かに表現主義みたいな力強さは生まれるけど、逆に曲想の落ち着いたところが変に空虚な雰囲気に支配されてしまっていたように思う(特に第2楽章の後半なんか)。非常に残念でした。本人的にはこれはこれで深化なのかもしれないけど、一番の持ち味であるはずのしなやかさを失くしたウィスペルウェイは、あまり積極的に聴きたい対象ではない。。

むしろこの日の白眉は、前半のプログラムじゃなかったかな。
二曲目のアンリ・プスール《あなたのファウスト》エコー第1は、微細な(しかもたとえばウェーベルンとは違ってコミカルな)パッセージが不規則に並んでいて、小体ながらも上品な抽象表現主義の一枚絵を思わす作品。ウィスペルウェイの脱力の仕方がナチュラルで可笑しく、さらにその前のヒンデミットを突き詰めるとああ確かにこんなふうになるなあという連関の妙味もあり、素敵でした。

続くリゲティソナタは、何度も登場する静かな上行グリッサンドが特徴的な第1楽章に、狂騒的な第2楽章のカップリング、、これが素晴らしかった!ウィスペルウェイらしい緩急の付いた見事なボウイングはここでは完全に健在で、まったく感心することしきり。
若書きの作品(1948/53)だけあって妙にロマンティックだなあと思って聴いていて、あとで解説を読んだら、第1楽章はジェルジ青年がチェロ科の女子学生に恋をして贈ったものだとか。あのグリッサンドは問いかけだったわけだ。女子学生もそれを受け入れていたら物凄い人生になるところだったねえ。

+ + +

生のウィスペルウェイを目の前にしてわかったのは、この人が吐息系・足バタバタ系ノイズの宝庫だということ。コダーイの第3楽章なんか顔が緩んで何度か舌が出てたし、最後の音符を弾き終えて弓を振り上げるのと同時に椅子からビョンっと飛び上がって見事な着地でした、という10.0。
by Sonnenfleck | 2009-12-26 16:50 | 演奏会聴き語り
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