目の前の庭に大きな柿の木が根を下ろしている。2008年の12月に引っ越してきたときには葉をすっかり落としていたから、このように見事に色づいた姿を目にするのは初めてなのだ。午後には、向かい合う僕の部屋の中が柿色に染まる。
ここのところ毎日、ヨゼフ・スークとヤン・パネンカが弾くブラームスのヴィオラ・ソナタに惹きつけられて仕方がない。なんて複雑な音楽なんだろうと思う。
それでもヘ短調の第1番のほうは、まだ幾分親しみやすさを感じさす。第1楽章の憂鬱で気高い主題に心を奪われない人はいないだろうし、すっきりとしたスケルツォに大管弦楽の残滓が窺われるのも素敵だ。桃色のカーディガンを身に着けたおじいさんのように、健やかでしかも少し翳りのある第4楽章が幕を引く。