シューマン生誕200年記念企画 ライプツィヒQ@東京藝術大学

c0060659_20333253.jpg【2010年5月15日(土) 15:00~ 藝大奏楽堂】
<シューマン>
●Pf三重奏曲第2番ヘ長調 op.80
→松原勝也(Vn)+山崎伸子(Vc)+野平一郎(Pf)
●《童話の挿絵》 op.113
→川崎和憲(Va)+鈴木慎崇(Pf)
●弦楽四重奏曲第3番イ長調 op.41-3
 ○同第1番イ短調 op.41-1~第1楽章?
→ライプツィヒ弦楽四重奏団


藝大のコンサートは安くて嬉しい。
一度は聴いてみたかったライプツィヒQの登場を狙って上野へ。

開演前に、国立音大教授の藤本一子氏によるレクチャー「室内楽におけるシューマンのポエジー」が聴けた。
コンサートのオマケで付いてくるレクチャーはなんちゃってなケースがほとんどだけども、今回は藝大主催らしく、真面目なレジュメが配布され、音源も用意され、わりと手加減なく音楽学のレクチャーでした(若干の総花的散漫さはあったけど、ソジェットカヴァートの話がたくさん聴けて嬉しかったです)

冒頭の第2Pfトリオは、残念ながらいい演奏ではなかったなあ。
どうぞどうぞ、いえおたくこそどうぞどうぞ、と互いに気を遣って、寒々しい低空飛行ながらも無事に着陸することがアンサンブルなのだとすれば、あれは見事なアンサンブルだったと言えるでしょう。
僕の聴いた範囲では、原因はヴァイオリンの調子の悪さにあったように感ずる(同行者は鳴りの悪さをしきりに指摘していた)。その低いフェーズにチェロもピアノも合わせた結果、飛翔しないシューマン。浪漫も何もない。

次の《童話の挿絵》は、技量的には十分だったし(さすが川崎氏の安定感は抜群)、掌に乗るくらいのプチロマンが漂っていて、「安心のうちに」聴けた。シューマンの浪漫はたぶん掌には乗らないくらい肥大しているのだけど。

+ + +

で。釈然とせぬまま後半の弦楽四重奏曲第3番
うーん。ライプツィヒQ素晴らしい。
こういうのを聴くとなあ。クラヲタの本場もん信仰が確実に補強されちゃうよなあ。
第1楽章の冒頭、最初のレクチャーでちょっと触れられた「初稿」と思われる不思議な和音が付け加えられて、まずその和音のシルクのような肌触りにノックアウトされてしまった。最近聴いたカルテットではカルミナもその青磁のような硬質さが段違いだったわけだけども、ライプツィヒはちょっと重心の位置が違うというか、細マッチョというか、しなやかで柔らかい筋肉を想像させます。

ライプツィヒの4人が編み上げるテクスチュアのしなやかさは、互いに譲り合うだけで相互の補いすらない前半のトリオと著しい対比を形作る。アンサンブルです。

同行者たちの意見に完全に同意だったのが、このカルテットのVaの個性。
Vaバウアー氏は、他の3人の下支えを完璧にやってのけるほとんど軟体動物のような器用さを持つのと同時に、当人も美音の持ち主のために表面に浮かび上がるとえらく目立つという、ドラクエ5で言えばスライムナイトのような全能キャラなんだよなあ。ライプツィヒQのしなやかさの多くの部分は、彼の能力の高さに関わっているような気がする。
by Sonnenfleck | 2010-05-26 20:35 | 演奏会聴き語り
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