【Virgin/ 6945640】
●ヨハン・クリスティアン・バッハ:《甘い炎》~カストラートのための忘れられたアリアたち →フィリップ・ジャルスキー(C-T) ⇒ジェレミー・ローラー/ル・セルクル・ドゥラルモニー いい!とてもいい!…クリスティアン・バッハが! もともと「ジャルスキーすげえ現象」を後追いするために買い求めたアルバムであったが、結果としては、末っ子バッハ氏の様式を自分の中で発見し、その偉大さを認識する手助けとなった。 まったく遅ればせながらではあるけども、クリスティアン・バッハの何に感銘を受けたかと言ったら、「オレがオレが自意識」からフリーなバロック的立場と、盛期古典派の豊かな旋律美が合体している、その独特の様式に!なのですな。 モーツァルト、確かにモーツァルトに似ている。しかし、モーツァルトでしばしば混入する自意識、超一流の作曲マジックによる微妙な浪漫的翳り、これが、クリスティアン・バッハには稀薄なのかもしれない。 そのかわり(まさにこれは、ロンドンの先輩ハンデル氏のように)、語弊を恐れずに書けば「心にもない」大袈裟な身振り手振りを、的確に音化していく職人的技術、その最良のものが備わっているように思う。その結果、彼の音楽の中にはプログレッシヴ・バロックとしか言いようのないものが炸裂している! + + + トラック1《シピオーネの慈悲》から〈勇士は戦い〉、あるいはトラック7《シリアのアドリアーノ》から〈敵のすべて〉、トラック11《アルタセルセ》から〈過酷さの海へ水を切って進もうと〉などは完全にヘンデルの未来形で、クレイジー&クールなタテノリアレグロ。 いっぽう、トラック6《シリアのアドリアーノ》から〈愛しい人、甘い炎よ〉などは、アルバムタイトルになっていることからもわかるように、クリスティアン・バッハ独自の清潔な抒情が漂うナンバー。6分30秒過ぎから「グラン・パルティータ しょうゆ味」みたいな雰囲気になって、これがとてもとても美しい。 ジャルスキーは、、特殊な糸を張った弦楽器、あるいは特殊な鉱物を削って造った笛、みたいな完璧トーンで、人間離れしてオーケストラから突き抜けていますな。 突き抜けられたオケ、ル・セルクル・ドゥラルモニーの側だって負けてはおらず、ダムラウのモーツァルト・アルバムの伴奏で聴かれていたとおり、ここでも要チェックに値する精密な音作りを続けている。
by Sonnenfleck
| 2010-07-03 19:18
| パンケーキ(18)
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Comments(2)
Commented
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あゆむ
at 2010-07-14 17:24
x
通りすがりですいません。
ジャルスキーの声って確かに人間離れしてますよね。 技術が凄い。 それでいて艶やかで柔らかい。魅力的ですね。
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Sonnenfleck at 2010-07-15 21:08
>あゆむさん
コメントありがとうございます。 本文ではクリスティアン・バッハのことばかり書いていますが、「ジャルスキーすげえ現象」はたしかに後追いすることができました。カウンターテナーに詳しい人には怒られるかも知れませんけれども、彼以前・彼以降というくくりができてもおかしくないなあと思ったりします。
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