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シャガール│ロシア・アヴァンギャルドとの出会い@東京藝大美術館

シャガール│ロシア・アヴァンギャルドとの出会い@東京藝大美術館_c0060659_19305853.jpgシャガール展かと思ったら、ミニ・ロシアアヴァンギャルド+魔笛展だった。展覧会としての構成は若干弱いのだけども、出品作における名作率?が高くて、かなり満足がいきます。

14時半の灼熱上野公園を縦断して藝大まで辿り着く。何もかも色彩がくっきりしている。この会場はだいたいいつもそうなのだけども、この日も土曜日の午後のわりには会場が空いていて、眺めやすい。真夏の日なかは狙い目なのだね。


◆ゴンチャローワ+ラリオーノフ レイヨニスム
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左 ナターリヤ・ゴンチャローワ 《葡萄を搾る足》(1911年)
右 ミハイル・ラリオーノフ 《タトリンの肖像》(1913年)

美しいね。夫妻の作品が、他に埋もれずにしっかり見られたのは、この規模の展覧会ならではかもしれません。

特にゴンチャローワの《葡萄を搾る足》《孔雀》の2点は、厳密にはレイヨニスムではないかもしれないけども、ヴィヴィッドな色彩と直球勝負な構図が爽快で、この素敵な時代の勢いを感じます。のちのストラヴィンスキーとの協同は(《結婚》とかね)、この時期の作品からしても十分に予想される。要するに、好きだ。もっと知られてほしい。
夫のラリオーノフのほうは、様式で様式を描いている感がなくはない。それでも《タトリンの肖像》は、マチエールが異常なまでに透き通っていて(jpgだとこんな見え方ですが)、タトリンのトンガリぶりを見事に表現していると思われた。

+ + +

◆MET 1967 THE MAGIC FLUTE

1967年、メトロポリタン歌劇場の依頼で《魔笛》の舞台美術を担当したシャガール。その一連のシリーズ約50点が、まとまった形では今回が本邦初公開なのですな。ちなみに、以下がこのときの豪華キャスト(METのアーカイヴより抜粋)。
Pamina..................Pilar Lorengar
Tamino..................Nicolai Gedda
Queen of the Night......Lucia Popp [Debut]
Sarastro................Jerome Hines
Papageno................Hermann Prey
Papagena................Patricia Welting
Monostatos..............Andrea Velis
Speaker.................Morley Meredith
First Lady..............Jean Fenn
Second Lady.............Rosalind Elias
Third Lady..............Ruza Baldani
Genie...................Kevin Leftwich [Debut]
Genie...................Peter Herzberg [Debut]
Genie...................John Bogart [Debut]
Priest..................Gabor Carelli
Priest..................Robert Goodloe
Guard...................Robert Schmorr
Guard...................Louis Sgarro

Conductor...............Josef Krips [Debut]

Production..............Günther Rennert
Designer................Marc Chagall [Debut]
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上 マルク・シャガール 《背景幕 第2幕第30場 フィナーレ》(1966-67年)
最上部左 同《パパゲーノ》(1966-67年)

それにしても、見蕩れてしまった。どれもこれも本当に美しい。舞台のデザインなのだが、画家シャガールがあの色彩をそのままデザインにぶつけているので、衣装も、背景も、煌めくような仕上がりなんですな。それだけでなく、どの人物にもシャガールの温かい愛情が注がれているのが、僕にとっては感動であった。かわいそうなモノスタトスにも、ザラストロの車を牽く獅子にも。

フィナーレの音楽を頭で再生しながら、フィナーレの背景幕を眺めていると、久々に、絵を見て涙が出た。この強い幸福感。

+ + +

そうそう、シャガールの他の作品は…。今回もポンピドゥーの所蔵品から選ばれているために、2002年の都美での大規模展に来ていた作品ばかりで、新たな発見はなかったけれども、それでもこの人のエッセンスが濃縮されてたなあ。《ロシアとロバとその他のものに》、そして《イカロスの墜落》との再会。

そのほかにも、カンディンスキーの闘争的風景画や、マレーヴィチのデザインに基づく夢想的建築模型など、見所が多い。なんと10月11日までという長期開催なので、もう一度行ってみようかと思っています。
by Sonnenfleck | 2010-07-25 19:32 | 展覧会探検隊 | Comments(2)
Commented by naoping at 2010-08-16 09:09 x
こんにちは。私はお盆休みに行ったのですが、そんなに混んで
ないですね。夏休みとあって科博の大哺乳類展と上野動物園に
人は流れて行ってしまった気がします。都美館は工事中だし、
他の美術館は何故か地味だし、穴場かなあと思いました。
「魔笛」の展示はオペラ好きにはたまりませんね。
Commented by Sonnenfleck at 2010-08-18 22:14
>naopingさん
そういえば都美は休館中なんですよねえ。あの昭和っぽい重厚な雰囲気、結構好きだったんですが、改装後はどんなにモダンになるんでしょうか。
魔笛の音源、Naxosでしたね(笑)
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