【2009年7月30日 プロヴァンス大劇場】
<エクサン=プロヴァンス音楽祭'09> ●モーツァルト:《魔笛》 K620 →ダニエル・ベーレ(T/タミーノ) マリス・ペーターゼン(S/パミーナ) アンナ=クリスティーナ・カーッポラ(S/夜の女王) ダニエル・シュムツハルト(Br/パパゲーノ) イム・スンヘ(S/パパゲーナ) マルコス・フィンク(Bs-Br/ザラストロ) クルト・アツェスベルガー(T/モノスタトス) 他 →RIAS室内合唱団 ⇒ルネ・ヤーコプス/ベルリン古楽アカデミー (2010年7月25日/Catalunya Musica) いやはや!なんとも! 周到に計算され尽くした最強エンタメ系魔笛が、今宵、カタルーニャよりお届け。 こんなにいじくり回されても、まだかたちを崩さないモーツァルトが凄い。 ヤーコプスの魔笛は、9月にセッション録音としてハルモニア・ムンディから発売されますから、楽しみにされている方は、以下はお読みにならないほうがいいかもしれない。このような演奏では、「一回性」が何よりも大事でして。 + + + 音楽は、ヤーコプスのなすがままにされている。オケも、ソロも、合唱も、すべてヤーコプスのなすがまま。驚くほど一糸乱れずヤーコプスの思い通りに運んでいて、これでライヴだというのだからたまらない。 立ち止まったり、急ダッシュしたり、うさぎ跳びで進んだり、期待どおりにうるさいヤーコプス節全開、あの「面白がらせ」が芬々としているので、嫌な人は本当に嫌でしょうな。僕も、これはCDを購入してまで聴きたいとは思わないけど、一回限りの愉しさは無類と言える。この「面白がらせ」のために、シリアスなシーンはだいたい台無しなのですが、ザラストロが第2幕のアリアで装飾を入れまくるのを聴くと、彼も気のいいオッサンみたいに思えてくるから不思議。 ただ、この演奏の一番の面白さは、セリフ部分のレチタティーヴォ化に集約されてしまう。急停止急加速は想定の範疇だったが、これには度肝を抜かれた。 たとえば、冒頭の3人の侍女の、シュプレッヒシュティンメと化したパパゲーノ脅しには、歌舞伎のような凄味のある色気があって、侍女の一人がふざけて夜の女王のアリアを口ずさんでいるのも許せる。なんという恐ろしいオバハンたち。 その上さらに、この演奏にはフォルテピアノがいるんだよね。 フォルテピアノはアリアの中にもいて、遠慮なくジャラジャラと鳴っているんだけど、やはり圧倒的な存在感を示すのがセリフの伴奏。そこで、その直後のアリアや重唱の旋律を先取りしたり、人物の感情を代弁したりする(パパゲーナ(婆)のシーンも凄かったが、第2幕のモノスタトスのアリア直前のセリフに、陽炎のような上昇音型の伴奏が付いたのは、なんというエロさかと感動した)。これはやっぱり、フィゲイレドが弾いているのか。 これがオーセンティックなやり方でないことは想像がつくのだが、ちょうどコジファントゥッテみたいに、つくりものじみて儚い美しさが音楽に漂い始める。魔笛を真摯にやろう、というのが20世紀呪縛だったとしたら、これはそこから自由。
by Sonnenfleck
| 2010-07-31 01:01
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