佐渡裕の《キャンディード》@オーチャードホール(8/7)

c0060659_10113473.jpg【2010年8月7日(土) 14:00~ オーチャードホール】
●バーンスタイン:コミック・オペレッタ《キャンディード》
→アレックス・ジェニングズ(ヴォルテール、パングロス)
  ジェレミー・フィンチ(キャンディード)
  マーニー・ブレッケンリッジ(クネゴンデ)
  ビヴァリー・クライン(オールド・レディ)
  ボナヴェントゥラ・ボットーネ(入国審査官)
  ジェニ・バーン(パケット)
  デヴィッド・アダム・ムーア(マクシミリアン)
  ファーリン・ブラス(カカンボ) 他
→ひょうごプロデュースオペラ合唱団
→ロバート・カーセン(演出)
⇒佐渡裕/兵庫芸術文化センター管弦楽団


何が行なわれたかについては、iioさんのレヴューがあまりにも美しくまとまっているので、ご紹介リンクを張らせていただくことでおしまいとしたいです。
あとは演出についてちょっと思ったことを。

+ + +

ヴォルテールの原作は、人間が好きそうだ。
バーンスタインの脚色と音楽も、人間が好きそうだ。
カーセンの演出は、、どうだろう。

ものがたりの最後、最後の5分間に至るまでは、カーセンの風刺演出も人間ラブという感じだった。この欠陥多き「創造された物」も、一日一日を頑張って生きているんだ友だちなんだ、という表明が感じられていた。
で、油断していたら鳩尾パンチ。
最後のナンバー〈僕らの畑を耕そう〉で、キャンディードが口にする歌詞と、舞台奥の巨大テレビに映し出された映像は何だったか。

We're neither pure, nor wise, nor good
We'll do the best we know.
We'll build our house and chop our wood
And make our garden grow...
And make our garden grow.

この歌詞に合わせて、原油に黒々とまみれた海辺、煙を空に吐き出す高い煙突、切り拓かれ荒廃した「元」森、そんなものを映し出す演出家の悪意。あれでは、キャンディードとクネゴンデの素朴なネオ・オプティミズムが(そして、プログラムノートのカーセンの言葉を信じれば、アメリカ国家自体が)、断罪され吊るされているのは明らかですわい。

ということを思ってしまって、こちらも素朴にホロリときていた最後の5分間が、極めて微妙な局面に変化してしまった。バンスタの人間ラブ精神(+もっとエモーショナルなマエストロ佐渡の人間ラブ精神>あの音楽の脂っこいうねりは凄かったぜ)の最高潮で、あえてそこで梯子を外す手腕。おかげさまで薄ら寒い心地でカーテンコールを迎えることになった。
人間ラブ、人間ラブ、人間死ね、だな。。ヴォルテールとバーンスタインが繋いできた最後の質問に、カーセンはあれで終止符を打ったんだろう。。

+ + +

しかし、この「勇敢な」演出精神や、群集の美しい振り付けや、海パン国家元首たちや、パングロスの梅毒ソングや、クネゴンデのコロラトゥーラに満足したおかげで、オーチャード帰途の渋谷のカオスに取り囲まれてもむしろ許せるくらいのオプティミストにはなれた。人間っていいな。かえろかえろおうちへかえろ。
by Sonnenfleck | 2010-08-08 10:09 | 演奏会聴き語り
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