熊野詣記(中)

◆(中)を始める前に
何冊か「熊野古道ガイドブック」を買いましたが、いずれも、実際的な情報という点では若干物足りない。「近露王子」~「本宮大社」区間は一日で踏破できる模範コース、とされているものの、ウェブ上でもコンパクトにまとまった情報はあまり見つからないのです。実際に歩く際のアドバイスとなるべき部分をこの色で示したので、参考としていただけたら幸いです。

◆8月24日(火)
05:30 起床
      ・トイレにカエルあり。
06:30 朝食
      ・民宿ちかつゆでは昼食のおにぎりを握ってくれる。前夜に頼むこと。
      ・(上)で書き忘れましたが、紀伊田辺駅前の観光案内所で
       「熊野古道めぐり地図帳」を絶対にもらっておくこと。
       よくできた地図で、これがないと山中で絶対に迷います。


06:50 出発、と、民宿ちかつゆのおじさんからアドバイス
      ・近露から本宮までの25キロは、7-11-7キロに分かれる。
      ・前後半の7キロずつは舗装道なので、歩きやすい。
      ・しかし中盤の11キロは山道なので、辛いだろう。
      ・出発したら、13時を回るかもしれないが、見越峠までは歩け。
      ・見越峠の休憩場所で昼食にし、残りに備えろ。
      ・ありがとうおじさん。
c0060659_8312711.jpg
↑さようなら近露の里。
c0060659_8321769.jpg
近露からは少し道がわかりにくい。やや歩くと一瞬山道に入る。朝霧。
c0060659_8323420.jpg
↑近露から最初の王子社「比曽原王子」。「王子」というのは旅人の安全を願って建立された神社≒チェックポイントのようなもので、これからいくつも登場する。もっとも、すでにそのほとんどは「王子跡地」なのだが。
c0060659_8325346.jpg
「比曽原王子」を過ぎて1キロ少し歩くと急な斜面を下る脇道があり、そこへ寄り道すると「野中の清水」がある。今でもかなりの量が湧いているようだ。恐る恐る(湧き水を口にするのは、やっぱし抵抗がなくはない)喉を潤すと、甘い。
この先3時間は水場がないので、必要なら水筒やペットボトルに充填のこと
c0060659_8331868.jpg
↑いくつかの王子を過ぎて、ここが前半7キロの最後の王子「小広王子」。ここから11キロ以上、民家はない。ここで09:00くらい。

+ + +
c0060659_8354793.jpg
↑いよいよ草鞋峠の山道に入る。近所のボランティアのおじいさんに励まされる。上り口に水場があり、タオル等洗える。恐らく飲料としては使えない
最初の「熊瀬川王子」がいきなり藪の中にあってワイルド。ここはかなり場所がわかりづらいので、地図と道標をよく見ること。
c0060659_836866.jpg
c0060659_8362526.jpg
↑中盤11キロの山道区間には、いにしえの石畳がこのような形でかなり残る。ただしよく滑るので足元注意。
c0060659_8364230.jpg
↑草鞋峠てっぺん。ここから「蛭降峠百八丁」だってさ。うひょひょ。
c0060659_837764.jpg
↑草鞋峠から「女坂」を下ると栃ノ河の谷。上りはまだいい。下りは。。
c0060659_8374085.jpg
↑草鞋峠の「女坂」と岩神峠の「男坂」をつなぐから「仲人茶屋」。その跡。奥のほうに微妙に石組みが残っていた。確かにここで休めたら楽だわなあ。
c0060659_838556.jpg
↑「男坂」。九十九折の急峻な上り。昼尚暗く、蝉も鳥もいない。心細いね。
c0060659_8383679.jpg
↑遥か遠くでチェーンソーの音がする。昔は斧の音だったのかなあ。水木しげるの妖怪図鑑の中にそういう妖怪がいたなあ。とか考えながら立ったまま休憩したりして、ようやく岩神峠てっぺんの「岩神王子」。
c0060659_8385850.jpg
↑しばらく、谷川沿いの平坦な道が続く。鳥肌が立つぐらい涼しいが、山の中ひとりぼっちの恐ろしさのせいかもしれない。歌を歌いながら歩く。こういうときクラシック音楽は頭の片隅にも上らない。
c0060659_8392370.jpg
c0060659_8394471.jpg
↑追剥ぎに襲われて落命した芸者を祀る「おぎん地蔵」と、旅人の安全を願った「蛇形地蔵」。これほどの山奥にもかかわらず清浄に保たれているのはなぜか。「蛇形地蔵」に久しぶりの湧き水あり!抵抗なく口にする。
ここで唯一の古道ハイカー(おじさん)を目にする。残念ながら会話を避けていそうだったので、挨拶にとどむ。
c0060659_840498.jpg
↑これが「道標」。助けられることしばしば。このほか500メートルおきに「番号道標」も立っていて、絶望したり安心したり。
c0060659_8402414.jpg
↑「湯川王子」のあたりは暗く湿った空気が漂う。解説によると1950年代まではここに集落があったそうで、いにしえのすめらみかどはこのあたりで休息の陣を張ったらしい。
さていよいよ見越峠への上り道というところで、ついに「ダル」に襲われる。
「ダル」は山で飢えて死んだものの悪霊、急に脱力感に襲われ、意識が朦朧とし、歩くこともできなくなってしまう、とあり、これも水木しげるの妖怪図鑑の挿絵が恐ろしすぎてよく覚えている。一昨日から続く風邪症状には特に変化がないものの、現代っ子たるワタクシは、ポケットに忍ばせたカロリーメイト(メープルシロップ味)で撃退。血糖値上昇。
c0060659_840538.jpg
c0060659_8411337.jpg
↑長い坂道を登りきると、ようやく見越峠の休憩所に到着する。昼食。アブに絡まれる(アブはなぜチンピラのように絡みますか)。先ほどのおじさんハイカーが先客として食事中なるも、やはり話しかけんなオーラが強くて無言の食事タイムとなる。ここに飲料水の蛇口あり。ちょうど12:00。

+ + +

見越峠を下り始めての90分は最大の難関でありました。だらだらと続く階段の下り坂に膝がすっかり笑ってしまい、そのくせ路肩を踏み外すと十数メートル真っ逆さま、という狭い山道で、ここは本当に辛く、写真が一枚もないのも道理なり。

途中、廃屋や廃田があり、なかなか気味が悪い。後述するバスの運転手氏に聞くところでは、つい最近、若い古道ハイカーが、廃屋の中に座る白い女に「休んでいかないか」と手招きされる「事件」があったそうで、、後からゾッとする。
c0060659_8413569.jpg
↑「猪鼻王子」。このあたりで疲労ピーク。見越峠で汲んできた水が重く、結局捨てざるを得ないという旅人のジレンマを体験することになる。
c0060659_8415926.jpg
↑「発心門王子」手前で残忍な急坂。へろへろになりながら上りきると、ついに発心門の鳥居が!
c0060659_8423776.jpg
c0060659_8425288.jpg
↑「発心門王子」着。これにて18キロ踏破。13:45。
c0060659_8431255.jpg
↑ここから後半区間だが、この状態で7キロも舗装道を歩ける自信なく、この区間は次の機会、諦むるも知恵なりと思い、草臥れきって14:03発のバスに乗り込む(これが本宮までの最終便なので注意)。龍神バスの運転手氏が優しい方で、たった一人の乗客のためにこのあたりのレクチャをしてくれる。熊野川が美しい。

ここまで熊野古道記でした。次回、熊野三山詣記。
「熊野詣記(上)」はこちら。)
by Sonnenfleck | 2010-08-29 08:52 | 日記
<< 熊野詣記(下) 熊野詣記(上) >>