【2010年7月29日 ロイヤル・アルバート・ホール】
●ワーグナー:《リエンツィ》序曲
●ベートーヴェン:Pf協奏曲第2番変ロ長調 op.19
→ポール・ルイス(Pf)
●ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95 《新世界から》
⇒アンドリス・ネルソンス/バーミンガム交響楽団
(2010年8月26日/NHK-FM)
旅の荷物を解いて、断っていた音楽への復帰をどうしようかと思っていると、折りよくベストオブクラシックの時間。ベスクラこそ僕の原点なのであるから、この選択は至極当然と言える。「特集・ヨーロッパ夏の音楽祭2010」の最中で、司会者にゲストがいる、いつものパターンなのも嬉しい
(最近はネコケンさんとか今谷先生とか、出てらっしゃるのかしらん)。
第一印象が
「強引豪快なセンス」「悪い油で揚げたアメリカンドッグ」だったネルソンスも、何の配剤天の配剤、ついにVPO来日公演のタクトを任されるに及んでは、再度しっかり聴かなくちゃというところ。
《リエンツィ》は想像どおり、ただブンチャカブンチャカと賑やかすばかりの演奏であった。つい先日NHKで放映されたBPOヴァルトビューネ、イオン・マリンの指揮が、幅広く大きく揺らぐ素晴らしい造形だっただけに、余計。
《新世界から》なんどまったくいかにも歓ばしく、愉快なアッチェレランドに開放的な音色で、むしろ一周してそれが心地よいくらいの明るい体育会系のノリなのですな。このへんの雰囲気は第一印象と全然違いません。第2楽章もコーラングレがリア充しとるでね。奇しくも今秋、彼がVPOとやるのがこの作品でありますが、案外大盛り上がりでネルソンス株急上昇か。な。
+ + +
しかしながらベートーヴェンの第2楽章が、ずいぶん深閑とした響きに満ちていたのが、僕にはショックでありました。実は彼の指揮する音楽を初めて聴いたときも、モーツァルトの3台Pf協奏曲にある種の真実味みたいなものを感じていたのだけども、それはこのベートーヴェンの第2協奏曲でも同様。
古楽風味を身に付けたモダンのアラサー指揮者たちの古典派緩徐楽章は、ときどき手の内が透けて見えるように感じることがある。ところが、ネルソンスの自信たっぷりモダン造形に、小手先ではない何か得体の知れないものが潜んでいるような気がしないではない。―
と、このように歯切れが悪いのは、それ自体に強い価値があるのか、あるいは久しぶりに食った実家の味噌汁が美味いだけなのか、わからんからであります。