猫としてのもうひとりのテレマン

c0060659_216632.jpg【ARIA VOX/AVSA9877】
●コレッリ:合奏協奏曲ニ短調 op.6-4
●テレマン:組曲二長調 TWV55:D6
●同:RecとGambのための協奏曲イ短調 TWV52:a1
●同:組曲ホ短調 TWV55:e1(ターフェルムジーク第1集より)
●ラモー:組曲《優雅なインドの国々》

→エンリコ・オノフリ(Vnコンチェルティーノ)
  リッカルド・ミナシ(Vnコンチェルティーノ)
  ピエール・アモン(Rec)
  マルク・アンタイ、シャルル・ゼブリー、イフェン・チェン(Ft)
  バラズ・マーテ(Vcコンチェルティーノ)、ルカ・グリエルミ(Cemb)
⇒ジョルディ・サヴァール/コンセール・デ・ナシオン

「ルイ15世時代のコンセール・スピリテュエル」とのこと。この企画はニケと彼のオケがCDを出すべきなんじゃないかしらんと思っていたが、サヴァールの新譜が出たので買ってきた。
数多い古楽才人たちの中で、サヴァールはどうも山師的存在というか、古楽のゲルギエフというか、刺激的かと想像させておいて完全な肩透かしとか、やる気がなさそうで突然濃密な音楽になったりとか、捉えどころのない人だと思ってます。
この人の熱心なファンにはなれそうもないわけですが、今回のディスクは何しろプログラムがもう、モダンでいったら「コリオラン序曲→メンコン→ブラ1」みたいな超名曲路線みたいなわけで。メンツも豪華だしなあ。

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コレッリの6-1でも6-8でも6-12でもなく、二長調 6-4を選んでくるところにサヴァールの鋭い山師的勘が見える(笑) 名曲ゆえに様々なアプローチがありうるこの曲で、サヴァールはそのイメージを激しく裏切り、清純派黒髪乙女のようなコレッリに仕立て上げている。しかしそこはそれ、何世代かにわたる古楽のヲタク化を経た後の黒髪乙女であるから、ピノックのコレッリのような素朴な黒髪乙女を想像してはいかにもまずい。
流れも響きも薄く涼やかなので騙されそうだが、第1楽章冒頭や第2楽章で聴かれるゴテ盛りの装飾、チョコチョコと賢しい第3楽章、ヘミオラの異様に軽い第4楽章前半―そして急激に響きを重くしてエグい後半。もはや、乙女でいるには病んでなければならないこの世界の悲劇。オノフリはいつもよりライトめ。

そしてテレマン。
サヴァールのテレマンって初めて聴いたあ。
いや、なんというか、シャム猫のようなテレマンだな。
ドイツやイギリスのアンサンブルの演奏とはだいぶ様子が違う。響きはからりと晴れ渡って、セクシーで熱っぽいくせに、フレーズの収めは13時の砂漠のように冷淡。世界中のテレマンが全部これだったら困ってしまうが、たとえばブルックナーにベイヌムとティーレマンがあるように、選択肢としては当然用意されていなければならない種類の演奏だよね。これまでの例が思い浮かばないな。全国のテレマンマニアの皆さん、こんな演奏ありましたっけ?
鬱勃としたエネルギーには定評のあるターフェルムジークの組曲ホ短調も、いやに紳士づらしてやがら。そのうえで動物みたいな艶っぽさが滲み出ているので愉快愉快。テレマン新境地。

このラモーは、まあ、ライヴならありかな。《アフリカの奴隷たちのエール》は、パーカッションが並外れてアフリカンである。ただし北アフリカ。

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サヴァールの体系的なテレマン録音を望むものなり。
by Sonnenfleck | 2010-10-09 21:19 | パンケーキ(18)
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