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バタが香るアヴァンギャルド。

バタが香るアヴァンギャルド。_c0060659_064634.jpg【RUSSIAN DISC/RDCD11190】
●ショスタコーヴィチ:交響曲第4番ハ短調 op.43
⇒ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/
  ボリショイ劇場管弦楽団

久しぶりにショスタコをマジ聴きしたくなった。第4。
文化省オケと、ギラつきヌラつきの点では最強の演奏を残しているロジェヴェン先生でありますけれども、実はもう一枚、ソヴィエト末期に名演を残している。ボリショイ劇場オケとの1981年盤がそれ。この前、ようやく新宿のディスクユニオンで掴まえた。

このライヴ、聴けば聴くほどに呆れるほどオケの音色が美しくって、非常に驚いている。
まず、土台になる強い馬力があるのはソヴィエトオケだから当然のこととして、弦の合奏が予想外にミルキーなのがポイント。第1楽章なんか特にそうで、輪郭がかっちりと精緻に合いながら、同時に甘い香りが漂うような響きを維持している(高速フーガ、そしてその後の再現部はひどく高級な様相)。この響きでルビンシテインやグラズノフをやったら絶品だろう、という響きのままこの交響曲をやれる、ある種のナイーヴさみたいなものが、このライヴでの不思議な品の良さにつながっているみたいです。

第2楽章の前半でフルートが雲雀のように浮き上がる箇所、ありますよね。あそこのロマンティックな清涼感は独特だし、その前後も決して不気味な雰囲気ではない。レントラーのリズムも、それを決める低弦の音質も紳士的で、バターのような照りを加えている。とても深みのある響き。僕らはいつも、ロジェヴェンの鮮やかすぎる色彩のパレットに騙されているだけじゃないのか?

オケ優勢で美し「すぎる」ところもある前二楽章に比べると、第3楽章はいつものロジェヴェン節とオケ間の化学反応の勝利、という感じがする。随所に鋭く突っ込んで彫りを深くしようと努める指揮者に対して、オケは今度はチャイコフスキーのように(もっと言えば《モーツァルティアーナ》のように)軽く甘いマチエールを提供する。かくして、ちょっと他の演奏では聴いたこともないような、古典的均整の取れた演奏に仕上がるというわけ。コーダの金管コラールも不思議と雄大で、しかもスターリンゴシックのよう「ではない」。これは魅力的。とっても。

+ + +

帝政の不思議な残響が残るショスタコーヴィチ。ゴスオケやレニングラード・フィル、モスクワ放送響とは異質の響き、、これは劇場のオーケストラが演奏しているから?これじゃステレオタイプすぎるかな?
by Sonnenfleck | 2010-10-23 00:08 | パンケーキ(20) | Comments(0)
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