スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/読響:老練老獪

そう、4月はミスターS強化月間。今月は全部の演奏会に行かせてもらいます。
スクロヴァチェフスキ、ほんとに大好きなんですよ。N響に客演した昨年は講義をさぼって全公演聴きに行きましたし、02年に読響を振ったブル8も忘れがたい。どうしてこんな人が毎年日本に来てくれるのか、まったくもって信じられません。

【2005年4月18日(日)19:00〜 第437回定期演奏会/サントリーホール】
●ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調 op. 21
●ブルックナー:交響曲第7番ホ長調


舞台袖からゆるゆると歩いてくるスクロヴァチェフスキ。1923年生まれですからもう今年で82歳なんですね。しかし指揮台には椅子も置かず、おまけに暗譜で指揮を始めます。硬派。
ベートーヴェンの交響曲はどれが好きであるかと問われたら、真っ先にあげるのは2番1番、次いで4番6番ときます。その中でも特に第1番は仕掛けだらけ…もしかするとこれがベートーヴェンの交響曲の中で一番演奏が難しい作品かもしれない。さて第1楽章冒頭の減七の和音、ここが濁ってたりした日には目もあてられませんが、相変わらず冴えてる。絶妙のバランス。続く楽句もスタカートを利かせてきりりと締めます。痛快。オケが両翼配置じゃなく普通の1stVn→2ndVn→Va→Vcだったので初め少しがっかりしたのですが、Vn群とVa&Vcの掛け合いが第2楽章の主要な素材であることに気づかされて合点。非常に立体的な音響が生まれていました。低弦の保続音上でVnと木管がコミカルに跳ね回る第4楽章、さすがにここだけはオケの粗さが気になる。。もうちょっと合ってくれー。読響は馬力に限れば在京オケ随一ですが、ことアンサンブルの精度となるとN響や東響に及ばない。ロースカツ定食1400円って感じです。スクロヴァチェフスキの持ち味はマニアックなまでの細部への拘りにあると思うんですが、少なくともこの日の読響はその要求に応じきれていなかったかなと。P席から眺める限り指揮者も楽員も楽しそうではあったんですが…。

後半のブルックナー7番。
全体は硬質な雰囲気が支配します。前半のベト1で顕著だった遊び心は消え失せ、ハードボイルドな感じに。馬力のある金管を最大限に開放し、弦中心の上行音型ではなく崩壊するような金管の下行音型に力点を置く。7番の第1楽章は甘く感傷的にもなりうるところですが、指揮者の厳しい統制でストイックさを保ちます。
この日の7番は、モダンな、すなわち「7番は1、2楽章が要であって、3、4楽章は付け足しだ」という考えに則した演奏だったように思います。第2楽章はそのために非常な巨大さをもって奏される。しかしそこには、ミスターS一流の微細な間のコントロールによって生まれる妖気のようなものも漂うわけです。うーん、、うまく言葉にできない…。聴き終わった今になると具体的にどこをどう指示していたか思い出せないんですよ。うまく幻術にかかってしまったような…。とにかくこの人がアダージョ楽章を指揮するときはたいていこういう重くロマンティックな様子になります。「素朴派」ブルックナーの対極。僕はこの「考え抜かれた重さ」と溶け合うという経験がしたくて、彼の指揮する演奏会に毎度通っているんです。
第3楽章はスケルツォ部分の鋭さを前面に押し出した演奏。読響の「あまりふくよかではない」弦の音色もここではかなり生きてきます。トリオで一瞬享楽的な様子になりますが、再び厳しいスケルツォが戻ってきて幕。さて第4楽章、同じブルックナーの5番や8番のように、それまでのすべてを受け止められるような大きさは7番のフィナーレにはありません。どうするか。この日のミスターSの処方箋は、コーダであざといまでのリタルダンドをかけることでした。なるほどー。

17日はひどいフライングブラヴォーがあったみたいですが、この日は何事もなく自然な喝采。お客さんたち大喜びでした。最後は一般参賀&サイン会。サービス精神の塊です。
by Sonnenfleck | 2005-04-19 09:23 | 演奏会聴き語り
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