心太中太

未読のままにしていた三島の『禁色』を読み終えました。「ピグマリオン」と『ヴェニスに死す』『ドリアン・グレイの肖像』への壮大なオマージュといった趣。でも…うーん、ちょっと微妙かなー。エッセンスだけ抽出してもうちょっと濃縮できそうなんですよね。各主題は魅力的ですが、それをつなぐ推移部がなんだか無闇と長い。個人的にはこれとまったく同じことを《エロイカ》にも感じるのですが(^_^;)

それはおいておくにしても、この小説の終結部で主人公がワインが飲む場面があるんですが、その描き方の生々しいことといったらないのですよ。虫の声のほか何も聞こえない秋の涼しい宵、白葡萄酒が罎から音をたてて切子硝子のグラスに注がれる。それをぐっと飲み干す。赤葡萄酒でも、ウィスキーでも、「ワイン」表記でも、真冬の夜でも、隣家で赤ん坊が泣いているのでもないんです。どうしてこんなにピタリとはまる素材を集めてこられるのか…。
飲食の描写が絶品の作家といえば、まず司馬遼太郎と村上春樹が浮かびます。彼らの描く食事風景も「まさにこれ以外ない」と思わせるものばかり。味覚で得た情報(およびそれを装飾する周辺の装置)を適切に言語化する能力は作家にとっては必要不可欠だと思うんですが、食事の描写をなおざりにしてる(というか端から食事場面なんて書かない)人はけっこう多くて残念ですねー。
by Sonnenfleck | 2005-04-27 23:34 | 日記
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