佐藤俊介<オールバッハ>無伴奏Vnリサイタル@所沢ミューズ(4/29)

c0060659_726172.jpg【2011年4月29日(金) 19:00~ 所沢ミューズ】
<バッハ>
●無伴奏Vnソナタ第2番イ短調 BWV1003
●無伴奏Vnパルティータ第3番ホ長調 BWV1006
●同第2番ニ短調 BWV1004
 ○アンコール 同第1番~アルマンド
⇒佐藤俊介(Vn)



ああ。なんだか。ものすごく佳かった。

ニ短調のパルティータで、サラバンドからシャコンヌに至る空気の様子が忘れられない。しっとりとしたガットの撓みを感じるサラバンド、太い電光が走るようなジーグ。そしてシャコンヌは、このヴァイオリニストのほとんど全部が析出してたんじゃないかな。
若芽が開くようにふっくり、、とニ長調に転調する箇所は、ピリオド専業のヴァイオリニストだとどうしても恥ずかしさが先に立つのか、意外にひねこびた歌になってしまっていることが多いと思うんだけど(ここだけ変にアタックを強くしたりね)、今回の佐藤君はほんとうにストレートに、失礼ながら男子高校生みたいな歓ばしさを歌い上げていて、思わず胸が熱くなる。ここには、藤村のごときやはらかいこゝろの存在を後景に感じるのであつた。僕の前に座つた女性はそつと泣ひてゐた。

佐藤君、彼の最近の好みが如実に表れて、右手は確かにピリオドだったけれど、歌われる彼の内面には爽快な浪漫がある。浪漫のあるピリオドのヴァイオリニストが、身近な若い世代の日本人に出てきてくれたことをとても嬉しく思う。

ところで、僕の席の周りにはたまたま小学生のお子様が多かったのだが、皆、明らかに呆気にとられて固まっている様子がわかり、可笑しい。きっと普段、ヴァイオリンのお稽古に励んでいるのだろう。いつか自分の中に歌うべき浪漫を熟成させろ。子どもたち。そのためには、音楽以外の藝術にもたくさん触れるんだよ。



前半、ホ長調のパルティータは、やや燃焼不足で湿気が消えなかったイ短調ソナタの借りを返さんばかりのお茶目ぶりで、これも佐藤君のやりたいことがよく伝わってくるのであった。
拍節感がかなりくっきりと確保された中に、時おりかわいらしい電流がぴりっ、ぴりっと通るようにして装飾的な音符が添えられたルール(これはたいへん素晴らしかった)。またガヴォットには、この日一番のぷりぷりと新鮮なアーティキュレーションが与えられて、客席も和む。



所沢の広い街路を悠々と歩く帰り道。何度も書いているが、良いコンサートのあとの余韻をじっくりと楽しむには、あれくらいの希薄な街並みがちょうどいいの。
by Sonnenfleck | 2011-05-03 07:27 | 演奏会聴き語り
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