ウルバンスキ/東響 第31回川崎定期演奏会@テアトロ・ジーリオ・ショウワ(6/12)

c0060659_8522144.jpg【2011年6月12日(日) 14:00~ テアトロ・ジーリオ・ショウワ】
●ルトスワフスキ:小組曲
●シマノフスキ:Vn協奏曲第2番 op.61
 ○バッハ:無伴奏Vnソナタ第2番イ短調~アンダンテ
→諏訪内晶子(Vn)
●ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ホ短調 op.93
⇒クシシュトフ・ウルバンスキ/東京交響楽団


先月から東響定期に通う格好になっているが、満足度がすごく高いんだよね。プログラムづくりの巧さもさることながら、「プチ重厚」なこのオケの音色の魅力がわかってきた気がしてます。

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1982年生まれのポーランド人、クシシュトフ・ウルバンスキ。体型が自分と似ててなんか変な親近感を感ずる(ただし向こうのほうがずっと格好いい)。暗譜。
バルトークとショスタコを溶融させてちょっと田舎風の寂しさを添加したようなルトスワフスキの民謡風小品に続き、シマノフスキの第2協奏曲である。後述するようにショスタコもよかったのだが、実はこっちがハイライトだったかもしれない。

「麻辣」は四川料理などには欠かせない味付けだが、このシマノフスキはまさしく音楽の「麻」、耳から始まって身体の神経がびりびりびり...と痺れていくような、鈍い快感を与えられた。これまでコンスタンティ・クルカのEMI録音を聴くこともあったが、実演で体感する痺れは、なかなかほかの作曲家からは得られない感覚であったことだ。
ウルバンスキの、この曲ばかりはスコアを捲っての音楽づくり。調味料の「麻」感を最大限に引き出すため、もともと不揃いの食感が楽しい食材をさらに乱切りにし、しかし乱切りのパターン分けをちゃんと行なって、その瞬間に口に入る食感がどんな様子かということまでちゃーんとコントロールしてるみたいだった。火加減も最高。

その火照った食材を取り分けて僕らの口に運ぶ、ひんやりと冷たい銀の匙のような諏訪内さんのソロ。高級な食器ほど「口に付けた瞬間、料理の味を損なわない触感」を大事にしているように思うけれども、諏訪内さんの歌い口、揺らぎ、高音の見事な透明感などは、まさにシマノフスキ専用の高級スプーンのように思われた。

この人のライヴはいっつもチケットが高すぎたり曲が面白くなかったりでずっと縁がなかったが、当の本人は、録音で聴くよりもずっと官能的な音色の持ち主なのだということをこの日のシマノフスキで理解。ごく純粋にブラヴァであった。ただし、バッハのあのアンダンテは曲のフォルムを成立させるのが困難な凄まじい難曲なので、アンコールはフツーレベルになってしまったけれど。



さて、サントリー定期の好評を目にし、タコ10ヲタとして厳しめに聴くことにした後半。厳しめに聴くことにしたのだったが。。

まず、第1楽章でのベートーヴェンみたいに剛直な拍の刻みがなかなかどうしてスリリングで、はじめから気持ちを持ってかれる。初演から60年近く経ち、そろそろ古典的な作品として処理する視点があってもいいと思っていたので、これは楽しかったな。
もちろん剛直といっても、ムラヴィンスキーみたいにカチカチに硬直してるわけでもないのが今風で、場合によってはメニューボタンからピッと選ぶみたいにして急に演奏モードを変えることも全然厭わず(たぶんあれはロジェストヴェンスキーモード)、結果ぐにょぐにょっと蠢く展開部などいかにも鮮烈である。

でも、この日いちばん感心したのは第2楽章だったんだよね。
シルヴェストリの闇タコを聴いたばかりで、あのグルーヴする第2楽章をどうしても思い描かざるを得なかったのだが、ウルバンスキの音楽の作り方はいみじくも、ブカレストと同じ方角を向いていたわけです。

速さや重さ、威圧感でこの楽章を押し切るのはたぶんそう難しいことではない。真に難しいのは、この小さくて凶暴な楽章に何らかの味わいを乗せることであって、何度も書くが90年代以降の録音が碌な結果を残せていないのには、そうした事情があるとみてよかろ。
剛直ムラヴィンモードから指揮姿もがらりと変え、マエストロ広上にも似たタコ踊りを始めるウルバンスキ。シルヴェストリと同じく、ダイナミックをかなり厳しく統制するために音楽は豊かに波打ち、さらに、過度のスピードを追求しない代わりにフレージングがたいそう華やかで、スターリンにフリルがついたみたいでメタ可笑しい。あっという間の出来事だったが、この指揮者の魔術的な手際を感じてしまったのだった(そしてもちろん、東響の巧さも)

ハチャトゥリャーンのいくつかの作品に特有な朗らかな稚気をショスタコに援用し、明るいリリシズムで塗り固めた第3楽章にも興味をそそられて、それだけに、第4楽章の圧倒的正統的正攻法に僕は無念を感じる。
正攻法になって急にオケの瑕が目立ったのも残念至極(個人の大きなミスだけじゃなく、アンサンブルのスタミナが尽きて草臥れてしまった)。あそこでもう一二回転予期せぬやり方で振り回され、驚かされる何かがあれば、生タコ10における伝説になるところだった。28歳マエストロのさらなる進化に激期待。

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さても新百合ヶ丘は遠すぎる。そして小田急文化圏は瀟洒である。駅の売店まで小洒落ている。オサレにゲロルシュタイナーなど買い求めて退散。
by Sonnenfleck | 2011-06-18 10:01 | 演奏会聴き語り
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