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西国立の三角

西国立の三角_c0060659_2083716.jpg【VALOIS/V4642】
<ファリャ>
●バレエ音楽《三角帽子》G.53
●クラヴサン協奏曲 G.71
→トニー・ミラン(Cem)
⇒エドモン・コロマー/スペイン国立ユース管弦楽団


素晴らしい。たいへん素晴らしい演奏。

自分が《三角帽子》に期待しているもののすべてがここに入っている。すなわち、微妙に緩いアンサンブル、妙に艶っぽい楽音、そして、いざという小節での脊髄反射的な跳躍感など。これまでに聴いていた巨匠指揮者+ガチなプロオケによるどのような録音にも増して、このディスクからはそうした要素がビンビンと伝わってくる。

+ + +

〈粉屋の女房の踊り〉では、左右から音の波しぶきをかぶるような豊かな揺らぎを感じるし、〈ぶどう〉で聴かれる管楽器たちのコケティッシュな素振り、一転してセギディーリャでは空気がしっとりとして、夜の香りが漂ってくる。
〈粉屋の踊り〉でパーカッションが激しい打ち込みをやらかせば、負けじとストリングスが鮮やかなアッチェレランドをかます。内部に競奏感覚があるヴィルティオーゾなユースオケって最強の存在ではないか?
〈代官の踊り〉での強烈なスパーク、そして、ホタでの弾けるような身体性。《ラ・ヴァルス》の最後みたいにして混沌と熱狂のうちに幕が下りる。いいねえ。

クラヴサン協奏曲も素敵だ。この曲はプーランクの亜流のように鳴ってしまいがちだが、ユース管の首席、及びゆかりの人物たちが組んだこのアンサンブルでは、楽音の生っぽさがより強調されて、土の香りと苦みと甘みを兼ね備えた最高の野菜サラダをシャクと囓るような幸福が感じられるのであった。
楽員たちの腕の良さももちろんだけど、エドモン・コロマーという指揮者の豊饒な色彩感覚も得難いものだと僕には思われる。これだけ烈しい色をぶつけ合って、混ぜずにちゃんと並立させてるのだ。ブラヴォだよほんとに。

何がこの録音をここまで高めているんだろう。同じくコロマーとスペイン国立ユース管でVALOISに録音してるらしい《恋は魔術師》や《スペインの庭の夜》も、いつか聴いてみたいものだわいな。
by Sonnenfleck | 2011-09-29 20:09 | パンケーキ(20) | Comments(0)
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