出張先でレオンハルトの訃報を知ることになった。
ああ。
昨年12月の演奏活動引退の報せに接し、文章を書こうとしても思うように書けないでいたところへこの訃報であった。彼は死期を悟っていたのかも知れない。
およそバロクーのなかでレオンハルトに導かれなかった者がいるだろうか(硬質なスタイルはときに反発をも呼んだが、それはただ、父親的存在への反感だったのではなかったか)。偉大な藝術家を僕らは永遠に喪った。
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2004年にソロチェンバロを、2011年にオルガンを、それぞれ一度だけ聴くことができたのは僕の大切な経験だ。特に、明治学院大学チャペルのオルガンを弾くレオンハルトの姿と、形づくられてゆく音楽の強度、空気の震動や湿度を忘れることはないだろう。
叶わなかったこともある。一度でよいから、レオンハルトが通奏低音を弾くアンサンブルを生で聴いてみたかったんだ。
彼がブリュッヘンやビルスマと録れたテレマンのトリオ・ソナタを、今ホテルの部屋でぼんやり聴いている。そろそろ支度をしなきゃいけないけれど。iPodに詰めた僕の夢だった。
R.I.P.