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男だらけで、遠く離れて、密かに隠れて。

男だらけで、遠く離れて、密かに隠れて。_c0060659_2124918.jpg【Virgin/5099907094323】
●ボノンチーニ:Pietoso nume arcier
●マンチーニ:Quanto mai saria piu bello
●コンティ:Quando veggo un'usignolo
●ボノンチーニ:Chi d'Amor tra le catene
●同:Bella si, ma crudel
●ポルポラ:Ecco che il primo fonte
●B. マルチェッロ:Chiaro e limpido fonte
●同:Veggio Fille
●A. スカルラッティ:Nel cor del cor mio

→フィリップ・ジャルスキー(C-T)+マックス・エマニュエル・チェンチッチ(C-T)
⇒ウィリアム・クリスティ(Cem,Org)/レザールフロリサン
 ~ヒロ・クロサキ(Vn)、カトリーヌ・ジラール(Vn)
  ジョナサン・コーエン(Vc)、エリザベス・ケニー(Tb,Lt)

近年出色の、エロバロデュオアルバム。禁色すなあ。
当代の人気カウンターテナー2人が組んずほぐれつ、差配はクリスティ以外の誰が務めよう。間違ってもピノックやルセじゃ義しすぎる。

品物を渋谷塔で見かけ、むんむんと漂うあちら側の雰囲気を感じて思わず衝動買いするも、オペラのデュオ曲集かというのは勘違いであった。

ここに収められているのは、1680年代から1720年代にかけて流行した「室内カンタータ」の系譜に属する作品たち。主として貴族の館の狭い室内で展開された、洗練され様式化された愛の歌である。華美というバロックの一大要素から正反対に舵を切り、隠微な美しさをこそ求める音楽。。

+ + +

どれもこれも官能の極致なのだが、就中、筆舌に尽くしがたいというか、その淫靡さに身悶えせざるを得ないのが、ベネデット・マルチェッロのカンタータ《ティルシとフィレーノ》からの重唱〈Veggio Fille〉である。

これ、歌詞を見るかぎりでは、ティルシ♂(ジャルスキー)がフィレ♀を想って、そしてフィレーノ♂(チェンチッチ)がクローリ♀を想って、それぞれ「じっと見れるけど口がきけねえ/口はきけるがじっと見れねえ」と男子中二病的な悩みを炸裂させてるようなんだけどさ(下図参照)。

 ティルシ♂ → フィレ♀(不在)
 フィレーノ♂ → クローリ♀(不在)

若干自信がないのは、フィレ♀=フィレーノ♂の愛称形ではないか、という点なのです。そうするとこのテクストは、

 クローリ♀(不在)
 ↑
 フィレーノ♂ ← ティルシ♂

という妖しいBL世界に変容してしまいます。
なんたって2人の歌の熱っぽい柔らかさと、クリスティのかそけきオルガンの音が、この誤解のままでもいいじゃない―?と僕を誘いに来るのです。この誘いに乗ってはいけない気がします。気がするけれど、それにしても美しい…。

あ、このアルバムにはポルポラや親父スカルラッティのかっこいいナンバーもいちおう入ってますんで。いちおうね。。
by Sonnenfleck | 2012-03-08 21:07 | パンケーキ(18) | Comments(0)
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