熱狂の復習―5月3日(木)その1|アレンスキー→シュニトケ→ペルト

c0060659_106449.jpg【133】5/3 1500-1545 ホールB5〈ツルゲーネフ〉
●アレンスキー:Pf五重奏曲ニ長調 op.51
●シュニトケ:Pf五重奏曲 op.108
⇒ボリス・ベレゾフスキー(Pf)
 スヴャトスラフ・モロズ(Vn)
 ミシェル・グートマン(Vn)
 エリーナ・パク(Va)
 アンリ・ドマルケット(Vc)


水も漏らさぬ、というアンサンブルではなかった。アレンスキーもシュニトケも、音程の定まらないところやユニゾンが破綻している箇所はいくつもあった。水はダダ漏れである。でも、湛えている水の性質が佳い。それが大事だ。

アレンスキーは第2楽章が印象深い。この楽章は変奏曲形式なんだけど、変奏していく主題の独特の高貴さは、音程やアンサンブルのメカが整っていることを必ずしも必要としてない。LFJ大好き熊さん・ベレゾフスキーをついにライヴで聴いたけど、この人も精緻さではなくムードの追求に余念がない。すなわちこの作品によく合う。

シュニトケはもう少し難物だけど、ショスタコムードの忠実な実践であるから、ソヴィエト臭い荒々しさで乗りきることもできる。特に第3楽章アンダンテから第5楽章パストラーレにかけて、たいへん荒涼として素晴らしい演奏が続いた。

【134】5/3 1645-1730 ホールB5〈ツルゲーネフ〉
●キリルス・クレーク Cyrillus Kreek:晩祷、首誦聖詠(詩篇104)
●作曲者不明:讃歌《沈黙の光》(ズナメヌィ聖歌)
●ペルト:《カノン・ポカヤネン》
~オードI, III, IV、コンタキオン、イコス、カノンの後の祈り
 ○アンコール メロディアスな何か
⇒ヤーン=エイク・トゥルヴェ/ヴォックス・クラマンティス


ECMからディスクをリリースしているオサレ系合唱団のみなさん。考えてみれば、メジャーレーベルから録音が出てるような合唱団を、合唱団だけのライヴで聴くのはこれが初めての体験かもしれない。
最初のクレークは1889年に生まれて1962年まで生きたエストニアの作曲家。いみじくメロディアス。次の単旋律聖歌(ズナメヌィ聖歌)との対比をなす。

しかし背筋が粟立ったのは、やはりペルトの《カノン・ポカヤネン(痛悔のカノン)》である。いちおうは4声合唱のために書かれているようなんだけど、声部内でも微妙にディヴィジが起こってるように僕には聴こえた。10数名のヴォックス・クラマンティスのメンバーがそれぞれ細かく分かれた声部を担当することで、物凄い不協和音の音波が押し寄せてくる。ドラッグを用いるとこういう感覚に陥るのかなあ。


↑参考:《カノン・ポカヤネン》からオードIV。

ま、ホールB5はまったく残響のない直方体なので、ちゃんと豊かな残響のあるホールで聴いてみたかったというのも本音。あれだけ乾いた空間でちゃんと合唱を聴かせる彼らこそ讃えらるべき。5/5勅使河原三郎の舞踏付きというのも面白げ。

この回のお客さんは、これまでの自分LFJ史上もっとも静かな人びとであった。みんな固唾を呑んで聴いていた。小さく携帯が鳴っても集中力が途切れない。

+ + +

雨がだらしなく降り続いている。寒くはないが陰鬱な心地。これも露西亜。その2へ続く。
by Sonnenfleck | 2012-05-04 14:09 | 演奏会聴き語り
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