東京大学教養学部オルガン演奏会:残響ゼロの面白味

友人に誘われて駒場へ。東大の駒場キャンパスには、実はオルガンがあります。
1974年、吉祥寺のとある教会のオルガンがぼやによって廃棄処分となりました。それを聞きつけた東大側が、その中でまだ使える部品を譲り受け、欠けた部品を足して新しくオルガンを設置したのが1977年のこと。その資金は森ビルの当時の社長が全面的に援助、設置にはNHKホールのオルガンを組み立てた望月広幸氏があたるという恵まれた状況下での誕生でした。その後、このオルガンを使って年に3、4回のペースで無料演奏会が開かれるようになり、熱心なファンを獲得するに至っています。過去にはリオネル・ロッグやマリー=クレール・アラン、鈴木雅明、武久源造、岡田龍之介など錚々たる演奏家がこの演奏会に出演しています。なかなか一般には知られていませんが、インティメイトですてきな催しなんですよね。僕はこれが二回目。

【2005年5月26日(木)18:30〜 第103回演奏会〈隔たりを超えて〉/教養学部900番教室】
●クレランボー:《第一旋法の組曲》〜〈グラン・プラン・ジュ〉〈フーガ〉
●マイヤー=フィービヒ:Orgのための5つのインヴェンション
●高田三郎/マイヤー=フィービヒ:《Pfのための5つの日本の民謡》〜〈子守歌〉〈かくま刈り〉
●ムファット:トッカータ第3番
●シャイデマン:《人よ、至福の生を望むなら》
●マイヤー=フィービヒ:Orgのための4つの間奏曲
●アラン:《モノディー》《鳴り響く二つの音による子守歌》《フリギア旋法によるバラード》
●バッハ:前奏曲とフーガハ短調 BWV. 549
→トーマス・マイヤー=フィービヒ(Org)


今日のソリストはトーマス・マイヤー=フィービヒ。1949年生まれのドイツ人で、国立音大の作曲科の教授を務めている方です。
僕はたいしてオルガンには詳しくないんですが、あの楽器が深い残響のある環境を前提としていることは容易に想像できます。しかしこのオルガンのある900番教室というのは、天井は高いながらごく普通のシューボックス型の講堂であり、したがっていささかの残響もない。でもこの状況は、逆説的に、オルガンを聴く愉しみの新しい局面を提示してくれます。いつも教会やホールでは豊かな残響でかき消されてしまうひとつひとつの声部の動きや、多彩なストップの操作が手に取るようにわかるんですね。いやーこれは面白い。

クレランボーやムファットといった中後期バロックの作品では、ポリフォニックな進行が素人耳にもよく感じ取られて大変に愉快。あのお定まりの終止が心地よいです。一方マイヤー=フィービヒ氏の自作は、晦渋な(しかし常套的な)雰囲気でなんとも入り込めない。和音の耳新しさとストップ操作による音色の多彩さを志向しているようで、確かにこの会場の響きはそうした意図にぴったりですけども。素朴な民謡旋律にヒヤリとする和音を組み入れてみたり、わざとけばけばしい音色を選択したりと、一番楽しかったのは高田作品の編曲でしょうかー。あと個人的にはジャン・アランが聴けて大満足。洒落ていながらどこか冷たく、近寄ろうとするとするりと逃げる、、抽象的な形容で恐縮ですが、とにかくアランのクールな魅力を最大限に引き出していたように思われました。

東京大学教養学部 オルガン委員会ホームページ(次回演奏会の案内などはこちら)
by Sonnenfleck | 2005-05-27 02:09 | 演奏会聴き語り
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