さようならガリーナ

Russian opera singer Vishnevskaya dies aged 86(BBC News/12月11日)
Galina Vishnevskaya, Soprano and Dissident, Dies at 86(The New York Times/12月11日)

仕事に忙殺されている12月、ガリーナ・ヴィシネフスカヤが亡くなった。
一度だけ、彼女を見たことがある。

ロストロポーヴィチが2003年の12月に東京文化会館でハイドンとドヴォルザークの協奏曲を弾いたとき。どうしてもスラーヴァのサインがほしかった僕は、終演後のパーティが終わるまで楽屋口で寒さに震えながら行列していたのだが、パーティが終わって上機嫌のチェリストに寄り添って出てきた老婦人は、ガリーナ・ヴィシネフスカヤのはずだった。彼女も人生の壮大な夕映えのなかにあった。

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このCDについて何か書いたことがあるような気がするけど、もう一度書く。
ロストロポーヴィチのショスタコーヴィチは、ぎゅうぎゅうに盛られた大皿料理のようである。この録音はモスクワ・フィルのソロイスツ・アンサンブルを使っているのに、並のフルオケでは歯が立たないような強靱な音楽が立ち上がっている。きっとこの曲の正統的な本質はバルシャイのほうに伝わっているのだろうけれども、ロストロポーヴィチの曲づくりにも教えられることが多い。

ヴィシネフスカヤは爽やかで可憐な声質の持ち主だった。彼女は夫の手になる大皿料理のなかに、爽快な香草のようにして自然に融けこんでいる。

今はモスクワのノヴォデヴィチ修道院墓地の、スラーヴァの隣に眠るそうだ。アポリネールが〈自殺〉の詩に描いたのは3本のゆりだったが、4本目の美しいゆりが夫と彼女を永遠に結びつけていることを願う。

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RIP.

by Sonnenfleck | 2012-12-23 09:31 | 日記
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