[感想文の古漬け]ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団来日公演@所沢ミューズ(11/18)

古漬けのなかでも比較的漬かりが浅いほうから。。

晴れた休日の午後に所沢に向かう西武新宿線の車窓が、たまらなく好きなんだよね。
あの変わりばえのしない多摩の平和が、この路線に凝縮されてると言っていいだろう。年に数回の所沢ミューズ遠征のお楽しみ。 ミューズのロケーション、航空公園駅から広い道をてくてく歩いて15分というのも好い。

+ + +

c0060659_238641.jpg【2012年11月18日(日) 15:00~ 所沢ミューズ・アークホール】
●グリーグ:組曲《ホルベアの時代から》
●ブラームス:交響曲第2番ニ長調 op.73
●ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14
 ○ベルリオーズ:ラコッツィ行進曲
⇒ヴァレリー・ゲルギエフ/
 マリインスキー歌劇場管弦楽団


ゲルギエフ。これまでの音盤やエアチェックから判断すると、彼が得意でしっかりモノにしている作品とそうでない作品との演奏の差があまりにも著しく、そこがちょっと不思議な指揮者です。
そんな印象も手伝って、ライヴではあんまり聴いていません。これがたぶん、2003年に読響とベルリオーズのレクイエムをやったとき以来の生ギエフ。あのときはサントリーホールの1階前方の席で、指揮者の汗が飛んできそうな熱演だった。この日はアークホールの3階正面に座る。

まず組曲《ホルベアの時代から》
小さく刈り込んだ編成の弦楽合奏の前にゲルギエフが立つと、実はこの日いちばんの予想覆しが。小体でふあふあと柔らかくまとまった、たとえばルドルフ・バウムガルトナーのような感触の響きがホールに流れ出したんである。
彼の中にある「ぼくのかんがえたりそうのようしき」で作品を整えることに成功すると、自信たっぷりの、文句の付けようがない音楽が生み出されるのだ。ゲルギエフを全面的に評価している人たちはこれが好きなんだろう。これならわかる。。

で、2曲目のブラ2は急に自信のない、へなちょこの演奏になってるんだなあ。
ブラームスは怖い。世界で一流のマエストロのひとりと目されている人物でも、準備や理解に不足があると全然料理にならない。彫り込みの浅い習作みたいなブラームスもどきを楽しめるほど、僕はゲルギエフを愛していない。

でも今日のゲルギエフは、ブラ2なら表層的にぴたりとはまるであろう過激なドライヴ感を封印してたのです(僕らが「ゲルギエフに期待する」ようなアレです)。培養中の「りそうのようしき」が彼のなかで熟成されて、いつか僕たちの前に出てくる前兆として捉えたいと思う。

そして休憩を挟んだ幻想交響曲は、極上のエンターテインメント!
ホルベア組曲と一緒で、やっぱり彼は一度モノにしてしまうととてつもないパワーを発揮して、全身から音楽を放射するような演奏を仕上げてしまう。こういうところは天才なんだなあ。
第2楽章の、絢爛にして遠くが見渡せないほど巨大なワルツ。鮮やかすぎて酔いそうなくらいの演奏実践だったことよ。得意なんだなあゲルギエフ。本当に。

+ + +

このあとゲルギエフはどうなっていくんだろう。
作品の消化は彼のなかで進んでいくんだろうか。彼の理想のベートーヴェンやブラームスが完成するまで幾度失望させられるかわからないけれど、そっと頭の片隅に置いておくくらいのことはしたいと思う。
by Sonnenfleck | 2013-02-04 23:10 | 演奏会聴き語り
<< [感想文の古漬け]スダーン/東... [不定期連載・歌舞伎座のクラシ... >>