貴公子ジノの平穏

c0060659_21522668.jpg【Hänssler/CD94.219】
<ブラームス>
●Vn協奏曲ニ長調 op.77
→ジノ・フランチェスカッティ(Vn)
(1974年4月27日、ハンス・ロスバウト・スタジオ)
●セレナーデ第2番イ長調 op.16
(1978年5月16日、ハンス・ロスバウト・スタジオ)
⇒エルネスト・ブール/SWR交響楽団

―あなたはどのヴァイオリニストがいちばん好きですか?

という質問をもらったら、たぶん、僕はレオニダス・カヴァコスかクリスティアン・テツラフかエンリコ・ガッティかで迷ったあげく、結局ジノ・フランチェスカッティと答えると思う。
もともとロベール・カサドシュの相棒として彼のことを知ってから今日まで、そんなにたくさんの彼の録音を聴いたわけじゃないけれど、悲劇ぶらずアダルトな彼の唄い口や、細くてもきらきらした美しい音色に魅せられてきた。

ブラームスの協奏曲が得意だったフランチェスカッティは、5つか6つくらいの録音を残している。今回、SWRのアーカイヴから掘り出された当録音はヴァイオリニスト72歳、キャリア最後期の演奏にあたり、フランチェスカッティの晩年を伝えるものとして貴重な存在(もっとも彼は1991年まで長生きしたんだけど)

晴れた日曜日の午後にじっくりと聴いて、まずはその技巧がほとんど衰えていないことに吃驚してしまった。老境のフランチェスカッティが「ブラームス」として提出してきたのは、うだうだと悩み苦しみ抜いたあげく枯れていくヨハネスではなく、かつてカサノヴァだったことを隠そうともしない自信たっぷりのヨハネス。上のほうで書いた涼しげな行書体が70歳を過ぎてなお維持されていて、若いころの録音と同じように貴公子のようなブラームスが繰り広げられている。

年老いたヴァイオリニストはボウイングの自制がきかずに悪魔のようなフレージングになっちゃうことも多いように思いますが、フランチェスカッティは地上に留まっているようです。燦々と太陽が照るような第3楽章のボウイングに惚れ惚れ。

余白に納められているのは第2セレナーデ。

ディスク全体を通してもブール/SWR響らしさ、みたいなものはほとんど感じないが、協奏曲の美しい第2楽章の冒頭を飾るObがものすごくペェペェした音で、いつでもリームとか始められますぜマエストロ、という空気が微笑ましい。
by Sonnenfleck | 2013-03-04 22:04 | パンケーキ(19)
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