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ぼくのクライズラー&カンパニー

ぼくのクライズラー&カンパニー_c0060659_22571266.jpg【BIS/CD-1196】
<クライスラー>
●ウィーン風狂想的幻想曲
●中国の太鼓 op.3
●蓮の国
●ジプシー奇想曲
●ファリャ/クライスラー:《はかない人生》~スペイン舞曲第1番
●グラナドス/クライスラー:スペイン舞曲
●アルベニス/クライスラー:タンゴ op.165 No.2
●ジプシーの女
●ヴィエニャフスキ/クライスラー:カプリース 変ホ長調
●道化役者のセレナード
●オーカッサンとニコレット
●ロマンティックな子守歌 op.9
●ドヴォルザーク/クライスラー:スラヴ舞曲第2番 op.46 No.2
●同:スラヴ舞曲第16番 op.72 No.8
●同:スラヴ幻想曲
●愛の悲しみ
●愛の喜び
●ウィーン奇想曲 op.2
レオニダス・カヴァコス(Vn)+ペーテル・ナジ(Pf)

僕がクラシック音楽について初めて「これはクラシック音楽のようであるぞよ」と認識したのは、たぶん、葉加瀬太郎が率いていた「クライズラー&カンパニー」が編曲演奏するクライスラーの曲たちを子ども時代に聴いたときなのである。だからいま、葉加瀬太郎がどんなに脂ぎった太めのおっさんに変容していたとしても、彼への感謝の念が薄れることはない。

やがてクラシックへの傾倒が強まるにつれ、ご多分に漏れずそうしたものを小バカにし始めた僕は、それから後、クライスラーの小品を集めたCDを1枚も持たないで暮らしてきた。でもいま一度立ち返ってみる。

+ + +

以前も書きましたが、現役最強のヴァイオリニストはテツラフとカヴァコスだと思っています(2人は1歳違いなのよ)。抜群の切れ味を誇る最新鋭の超硬工具のようなテツラフに対して、カヴァコスはまったくその逆、20世紀前半の西欧のヴァイオリニストのように艶やかで乾いた貴族趣味を感じさす気品ある唄い口が魅力。

どの曲がどんな演奏で、という感想文はこうした音盤には似合わないだろうから、カヴァコスの銀線のように細身の美音によって織り上げられていく総体の印象を愉しむのがよい。ウィーンのお澄ましからスペインに旅し、そこからひらりと翻って後半のスラブ趣味から、最後はまたウィーンに回帰していく、この章立て。しかしそれでも、スペイン=アラブ風味が5曲続く地区ではカヴァコスのボウイングが特に冴えて、伊達な仕上がりが聴かれるようには思うんですけどね。

このディスクはカヴァコスのディスコグラフィの比較的初期に録音されたものだと思うんだけど(ジャケットのセンスもどこか冴えない)、クライスラーがたくさん作った例の擬バロック様式の作品がチョイスから漏れているのが面白い。ヨーロッパの空間を自在に移動するアルバムに、時間の軸を導入しないことによってコンセプトをくっきりさせる。洒落ていますよね。

やっぱり買ってよかったな。小さめの音で、よく晴れた土曜日の朝に聴きたい。
by Sonnenfleck | 2013-05-28 22:58 | パンケーキ(20) | Comments(0)
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