【2013年9月14日(土) 14:00 サントリーホール】
●ムソルグスキー/R=コルサコフ:歌劇《ホヴァーンシチナ》~前奏曲〈モスクワ川の夜明け〉 ●スクリャービン:交響曲第4番《法悦の詩》op.54 ●チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 op.64 ⇒インゴ・メッツマッハー/ 新日本フィルハーモニー交響楽団 2013/14シーズンの個人的オープニングにして、ほぼ2ヶ月ぶりのフルオーケストラ。男子の朝・男子の夜・男子の昼、みたいな高2系プログラムも興味をそそる。 メッツマッハーを聴くのは1月のアルペン以来ですが、やっぱり前回と同じように、マルケヴィチやベイヌムを想起させたのだよねえ。 鮮やかに分離した声部の襞々と(鮮やかに分裂して静止していれば、それは≒ブーレーズ)、それだけではない自在に伸縮する横への流れ。こうした美質をメッツマッハーは先輩たちと同じように備えていると思うのです。 + + + まずチャイコフスキーから書こう。 スタッカート多用のポツポツしたアーティキュレーションで第1楽章が始まってちょっと困惑させられた聴衆は、やがてメッツマッハーの巧妙な仕掛けに気づく。 「普通の」チャイ5であれば1stVnの分厚いレガートに覆われて見えない木管隊の密やかな声部、これが弦楽器とバランスされてしっかりと浮かび上がる。メッツマッハーが頑なに指定する急速なインテンポに率いられて、それらが鮮やかに分離しながら華々しいテクスチュアを織りなす様子は、ダンスだよ。 ハーモニーの上では無理な統合で縛られないので、一本一本の声部は主張をやめないが、それらがリズムの上で統合されたとき、ペルシアの絨毯がうねるような豪奢な美が目の前に現れる(より正確に言えば「現れそうになっていた」)。 つまり、メッツマッハーが最終的に目指しているものは明確なのだよね。したがって第2楽章では、もし新日フィル弦楽隊に一層の照りや艶があったとしたら、なお適切なバランスで浪漫の絨毯がホールに敷かれただろう、という瞬間がないではなかった。それは、このコンビを聴き続けていく理由は十分にあるということを意味するだろう。 第4楽章など、VaとVcの刻みがあまりにも機能的な美しさを放つのでまるでストラヴィンスキーのように聴こえる局面もあり、たいへん興味深い。 響きを器用にまとめ、どちらかと言うと腰高な音を持つ新日フィルと、上に書いたようなメッツマッハーの目指す音楽とが、別々の方角を向いているのではないのは疑いない。あとは2直線が交わるのを聴衆は待ってる。 + + + 前半のスクリャービン。藝術の峻厳な高みに近づくために、ここで少し不適切な表現を使うのを許してください。 多くの《法悦の詩》が「ボカシあり」だとすれば、メッツマッハーの《法悦の詩》は「無修正」だったと思われる。のたくりながら絡み合う声部たちはやはり綺麗に分離していて、このよくわからない交響曲を初めて何かの描写だと納得させてくれたのだった。直接音の多い座席で聴けたのは幸運だったと思うけど。 次はメッツマッハーのベートーヴェンかハイドンを聴いてみなくちゃいけないなあと思うのでありました。
by Sonnenfleck
| 2013-09-16 10:31
| 演奏会聴き語り
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