弦楽四重奏コンサート:Deconstruct the 19th century

【2005年6月19日(日)14:00〜 サロン・デュオ】
●ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第6番変ロ長調 op. 18-6
→カルテット・マリンコニア
●メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第2番イ短調 op. 13
→カルテット・ヌル
●ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第13番ト長調 op. 106
→カルテット・ピーヴォ


友人に誘われて、密やかな演奏会に行ってきました。
会場となったのは、JR代々木駅から徒歩5分ほどの距離にあるマンションの一室を改造して作られた「サロン・デュオ」。ごく普通のマンションのエレベータを上がり、無愛想なドアを開けるとそこには隠れ家のようなサロンが…というドキドキの環境です。こちらはアルテ工房という弦楽器工房が、顧客の演奏会などに使用できるように設けたのだそう。部屋は決して広くなく、壁面にはVn属(ただし一般的でない形状)の古楽器がずらりと掛けられ、抑えめの照明がいい雰囲気。客席は40席ほどでしょうか。
出演者団体はいずれも、東京大学オケのソロ奏者たちや大学院生たちで構成されたアマチュア。しかし難曲揃いのプログラムからも窺えるように、普通のアマではありませんです。

1曲目のベートーヴェンは、恥ずかしながら初聴。やはり初期作品なだけあって第1から3楽章までは古典的な調和感が支配的です。アンサンブルをリードする1stVn氏とVc氏の音楽性も、決して激することのない晴朗で理知的な様子で曲調に合致。緊張の様子も特になく、アンサンブルテクも十分。ただし、その序奏部分に「憂鬱」と書き込まれた第4楽章にはベートーヴェンの前衛性が滲み出ておりまして、続くロンド主題の明らかな躁とともに、まだ楽譜の持つ毒々しさへの掘り下げが足りないかなーと思われてしまいました。もう少し生々しい表情づけがあってもいいかな。彼らの演奏でハイドン(かラヴェル)を聴いてみたいです。

2曲目はメン2。先日エントリを書いたばっかりですね。ところがそのカルミナ四重奏団とは完璧に異なる属性、、いい意味でも悪い意味でも「熱い」「漢の」演奏でした。作品全体の鍵となる第1楽章の序奏は意外にさっぱりと始まりますが、主部に入ると2ndVn氏とVa氏が分厚い(そして大変失礼ながら汗くさい)テクスチュアを形成して、アンサンブルをがっちりとリード。しかし面白いことに1stVn氏はそれとは異なり、鋭く浮かび上がってはきつめの音を放射するタイプ。音程は犠牲にしつつもその存在感は独特で、なんだか惹かれてしまいますねー。第2楽章は抒情的な箇所に比して中間部の感情的な山場に強いアクセントが置かれ、浪漫的。すまして通り過ぎてしまうような第3楽章も、むしろその垢抜けない歌謡性にスポットライトを当てている。第4楽章序奏部の1stVn氏のモノローグは劇的な効果が十分に考慮され、4者が有機的に分厚く絡み合うというスタイルも、主部に入ってさらに一層強調されて心に迫ります。そして最後にちょっと火照った様子で最初の主題が静かに回帰する様子、、漢っすね。小さくまとまるのを避けるというのは本当に勇気の要ることだと思いますが、彼らにはそれができている。

3曲目は見事に集中力が途切れてしまってろくに聴けなかったので、細かいコメントは差し控えます。ひとりひとりの技量の高さという点ではこの団体が図抜けていましたが、前半にあんなメンデルスゾーンを聴いたあとでは、「表現したいもの」を感じさせない演奏というのはどうしても聴き劣りしてしまいます。。
by Sonnenfleck | 2005-06-20 20:02 | 演奏会聴き語り
<< 地平線上の夏 廻る廻るバトンは廻る >>