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ベルリン国立バレエ団来日公演:変容できてへんよ

…夜型生活へシフト。まずいです。ギャグも冴えます(死)

【2005年6月24日(金)17:00〜 来日公演/東京文化会館】
●ワーグナー/ベジャール:楽劇《ニーベルングの指環》にもとづく変容の物語


金曜日、ベルリン国立バレエ団の来日公演を観てきました。
実はバレエ公演に行くのは今回が初めてです。前々から本格的なバレエを観てみたかったんですけど、何から入ればいいのかわからない。そこでバレエ通の友人に聞いてみると「あなたは古典よりコンテンポラリーのほうがいいかもねー」との助言(たぶん当たってる)。さっそくチケットを手に入れて、上野へ急行しました。いつもと客層がぜんぜん違うぞ…。

《指環》全曲を、ベジャールの振り付けと演出で4時間強に再構成したのがこの日の演目。ストーリーは自然とわかりにくくなりますが、そこで案内人として(≒主人公として)登場するのがローゲなんですね。もともと原曲でもローゲは四部作を貫いて存在しているので(最後の最後でブリュンヒルデが突っ込むのもローゲの炎だし)、この演出は非常に真っ当でしょう。そのローゲを演じるのは、ベルリン国立バレエ団の芸術監督であるヴラディーミル・マラーホフ。たぶんとってもすごい大スターなんだと思います(周りのおばはん連の反応を見ると)。

音楽は生オケではなく、テープ(たぶん、、ショルティの録音)。聴きに行く前はかなりがっかりしてたんですが、幕が上がると確かに納得。というのも、舞台上には「グランドピアノ」と「演技を伴うピアニスト」が出ずっぱりで、ストーリーの進行に合わせてライトモティーフを自由に変奏するんです。ピアニストとテープはコラージュ風に組み合わされて、なかなか巧い効果を上げてました。ピアノ5割、テープ4割、無音1割といった感じかな。さらに登場人物たちの心象を代弁する弁者が加わって、かなり情報量は多いです(でも事前にストーリーを予習してない聴衆(普通のバレエファン、と言い換えてしまっていいでしょうね)には多くの部分が意味不明だったんじゃないかなあ)。

以下、箇条書きにて気になったところを書き出してみます。ネタバレです。
■《ラインの黄金》部分
・後景に高い煉瓦壁、上手に二階建ての建物の外壁。ピアノ。
・ヴォータンが槍を手に入れるエピソードから開始。音楽はピアノによるライン河の描写。
・神々の自己紹介。ここでなぜかヴォータンが二人になる(たぶん本音/建前の二人なんでしょう)。
・ここでローゲが「俺はほかの神さんたちと一緒に生ぬるく生きるつもりはねえ」と反逆。ほかの神々は戦前のバイロイト演出みたいな仰々しい衣装でヴァルハル入城。

■《ワルキューレ》部分
・エルダと「本音」ヴォータンの交情場面から開始。ブリュンヒルデと妹たち誕生。「本音」ヴォータンが双子を育てる場面あり(説明過多?)。
・フンディングが死なない。
ブリュンヒルデがノートゥングを折るくだりは、非常に秀逸。歌詞に縛られた普通の状態ではああいう理にかなった演出はできない。バレエの強み。
・魔の炎の場面ではローゲ大活躍。

■《ジークフリート》部分
・ミーメがおかまっぽく演出されていて不憫。さすらい人(「本音」ヴォータン)がなぜかローゲとともに現れる。ローゲはノートゥングを鍛えるのに力を貸す。
森の小鳥が張りぼてで、さすらい人やローゲが動かしている。

■《神々の黄昏》部分
なんとグリームヒルトが登場!妖艶な様子でアルベリヒと絡む。ハーゲン誕生(やっぱり説明が煩い)。
・ノルンたちがギービヒの館まで出ずっぱり。ハーゲンの夢の場面にまで登場し、おまけに最後まで綱が切れない(意味不明です)。
・忘れ薬〜結婚式〜ジークフリートの死までがめちゃめちゃに短縮されている(10分くらい?)。
・葬送行進曲の中間部あたりでやっとジークフリートが刺されます…。遅いよ(笑)
・「自己犠牲」ブリュンヒルデが神々しく登場、美しい踊りとテープによる感動が高まっていく、、と思いきや、なんと音楽が停止、静寂、上手の建物が崩壊。後景の煉瓦壁に亀裂が入り、二つに割れます(まあきっとベルリンの壁なんでしょう。白々)。
・最後、登場人物が無音で全員舞台に座り込むなか、音楽はなんと《パルジファル》の第1幕前奏曲。亀裂の間に立つ「本音」ヴォータン。弁者がヴォータンの気持ちを訥々と代弁するには、「悟りを得たものだけが救われるのだ、云々」。。これはさすがに酷い。このエンディングはありえない。キッチュ。

もっと激しい脱構築があると、芸術的な価値も開けてくると思います。説明口調という誘惑からどれくらい自由になれるかということ。小うるさいメタファが多すぎる。
肉体を楽しむ、という意味では、素人でもわかるくらいハイレベルでした。特にブリュンヒルデ役のナディア・サイダコワ、そしてなんといってもマラーホフの演技は本当に美しかった。終演後、おばはんたちの間をすり抜けながら、次は古典に挑戦してみようと固く心に誓ったのでありました。
by Sonnenfleck | 2005-06-26 04:20 | 演奏会聴き語り | Comments(6)
Commented by hummel_hummel at 2005-06-27 23:26
こんにちは。ベジャールのリンク、話には聞いていましたが、かなり無理のあるストーリー展開なんですね。(それでもやっぱり見てみたいですが。)
ちなみにマラホフはベルリンの「おばはん」達にも人気あります。
Commented by Sonnenfleck at 2005-06-28 00:14
>フンメルさん
どうもです◎
あの十何時間の大作を四時間にまとめるという課題に関して言えば、かなり巧くまとめてるとは思います。でもストーリーが破綻しないことに気を配りすぎるあまり、説明口調が最後まで抜けないんですよね。もっとメチャメチャにやってしまえばいいのに…というのがいちばんの感想です。
マラーホフは確かに遠目から見ても格好いいです。彼が登場すると客席のおばはんたちが一斉にオペラグラスを取り出すので、思わず笑ってしまいました〜。
Commented by Honey at 2005-06-28 01:12 x
はじめまして、Honeyです。
はろるどさんのところから、たどってまいりました。

私は前日に行ったのですが、確かに客層が
違いました、
『ラ・バヤデール』の日とは。
クラシックファンがだいぶ来ているに違いない、と思いました。(笑)
ストーリー展開、音楽については、
本当におっしゃるとおりの気がします。
気がします、というのは、断言or判断するほどの知識が
私にはないので。

最後は、ナンダイ、コレ?って思ったのは事実。(苦笑)
それにしてもこの公演は素晴らしかったです。
(このバレエ団ほど、顔と身体が揃って美しいのも珍しい・・・)
いつか機会があったら、ベジャールバレエ団での上演も
見比べてみたいものです。

いきなりのおしゃべり、失礼しました。
TBさせていただきます。
Commented by Sonnenfleck at 2005-06-28 20:28
>Honeyさん
はじめまして◎コメントありがとうございます。
演目は《ラ・バヤデール》にしようかとも思ったのですが、上に書いたように友人からの助言があり、それにストーリー知ってるし…という感じで《指環》のほうを選びました。確かにベジャールバレエ団の公演は観てみたいですね。もう少し違った演出になるのでしょうか??
おっしゃるとおり、私のようなバレエ素人が見てもソロから群舞の構成員まで全員きれいで、肉体そのものの美をたっぷりと堪能できました。今度はプロコフィエフなんかも見てみたいですね^^
今後ともよろしくお願いします。こちらからもTBさせていただきました。
Commented by Honey@鼻ブーム(笑) at 2005-07-08 23:57 x
こんばんは、Honeyです。
今更ですが、バレエ関係のBBSで、とても沢山
(オペラも、ベジャール版も)見ている方の感想が出ていました。
もしご興味があれば、、、下記ページの6月30日の記事です。
http://cgi.din.or.jp/~harucha/bbs.htm
ではまた。
Commented by Sonnenfleck at 2005-07-09 09:33
>Honeyさん
私も鼻ブーム中です(笑) オペラを観おわったあとも図書館で《鼻》のLPを借り、あのごちゃごちゃに浸っていますよ〜。
この方の記事(とこのBBS)…すごいですね。勉強になりますφ(. . ) ご紹介多謝です◎
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