シュトックハウゼン来日記念演奏会:異質なものに包摂されること

c0060659_033750.jpg【2005年6月26日(日)16:00〜 <東京の夏>音楽祭/天王洲アートスフィア】
●シュトックハウゼン:《リヒト=ビルダー》(2002)
●同:《天使=行列》(2000)
→スザンヌ・スティーヴンス(バセットホルン)、
 カティンカ・パスフェーア(Fl)、
 フーベルト・マイアー(T)、マルコ・ブラーウ(Tp)、
 アントニオ・ペレス・アベラン(シンセサイザー)
 カールハインツ・シュトックハウゼン(サウンド・プロジェクション)


今年の<東京の夏>音楽祭の目玉は、何といってもシュトックハウゼン28年ぶりの来日でしょう。前回は大阪万博のドイツ館で自作を披露、そして今回はオペラ《リヒト》の第7夜〈日曜日〉の第3場の日本初演を仕切るためにやってきたシュトックハウゼン。ミーハーな僕は、ホール三階の椅子に腰掛けながら、現代音楽ファンでもないのに「あの《リヒト》もついに完結か…」などと不遜な感慨に耽っておりました。
そこから見下ろすと、一階平土間の中央付近にミキシングブースが設営されているのが見えます。そこには白人男性が座って機器のテスト中で…って本人じゃんっっ!きさくな作曲家77歳、ホール中の視線を釘づけにしながら悠々と開演を待つの図

前半は件の《リヒト=ビルダー》演奏会形式での日本初演です。
舞台には四人の演奏者が(上手からトランペット♂、テノール♂、フルート♀、バセットホルン♀)全員70年代のSFのような原色の衣裳を身につけ、横一列に並びます。テノールの歌唱(シュプレッヒシュティンメ風…って言っていいのかな)に、残りの三人が濃密に絡む。彼らが出すのは楽音にとどまらず、舌打ち・笑い声・楽器を吹きながらのしゃべり、など音楽外の要素が満載です。シュトックハウゼン自身はスコアを繰りながら、彼らの演奏にさらに電子音をミキシング。でも…思ったより面白くないってのが本音です。総じて聴きやすいし、ところどころ響きがめちゃめちゃに美しかったりしますが、こういう音楽はもう他にたくさんあるような気がする。かといって斬新なコンセプトで聴かせるわけでもなし、何もこれをシュトックハウゼンに求める必要はないような。他の人々はいったいどう感じたのかしら。。

後半は《リヒト》の第7夜〈日曜日〉の第2場〈天使=行列〉を、テープ録音にて上演。
たくさんの合唱隊が客席を含むホール中を移動しながら演奏する作品なので、生でなければ楽しさ半減かなーと思っていましたが、さにあらず。
聴衆がみな席に着くと、最低限のものを残して照明がすべて消され、ホールは闇に包まれます。唯一の視覚的演出が、舞台の後景に照射された丸い円(月?)。
さてここでその威力を発揮するのが、アートスフィアのスピーカ群なのでありました。音源の微妙な移動、そこから生まれるザラザラした空間を見事に再現(というか人間の合唱隊じゃあここまでできないですよ)。さらにこっちは視覚情報から遠ざけられてるので、否応なく聴覚に神経が集中します。言葉で表現できないのが悔しい…異様な音響体験、としか書けないです。いまコンサートホールで「純粋に新しい体験」だと感じられるものと遭遇することは(少なくとも自分は)ほとんどないのですが、昨日のあれは、まさしく未体験の何かでした。きっとしばらく忘れられないです。

終演後は当然のごとく盛大なスタンディング・オベーション。ただ、ひとり猿のように興奮したヲタが叫びまくってみんな引いてましたが(笑)作曲家はかなり満足気でした。サイン、ゲットです(根がミーハーなのでね)。やたっ。
(掲載写真は©Rolando Paolo Guerzoni)
by Sonnenfleck | 2005-06-27 23:57 | 演奏会聴き語り
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