佐々木倫子『動物のお医者さん』全8巻、1995-1996年、白水社文庫(1988-1993年、白水社)。(画像は第1巻)
墓参り、油蝉、同窓会、西瓜、高清水、親戚の集まり(+宴会)。お盆はいつまでたってもお盆のままです。それがよいし、それでよい。
さて『動物のお医者さん』。有名な作品ですね。
本作は、札幌のH大獣医学部を舞台とした「物静かコメディ」。愛らしい動物たちと、一筋縄ではいかぬ曲者揃いの学生・教授たちによって繰り広げられる生活の様子を、作者は巧みに構築してみせます。物語は獣医学部に合格した主人公(そしてその飼い犬チョビ→90年代初頭のシベリアンハスキー・ブームを生み出した元祖ハスキー犬であります)の成長とともに展開。すべてを達観し老成した主人公、剛毅な祖母、傍若無人な指導教授、頼りにならない親友を巻き込んでふわーっと流れゆくストーリーには、体中の余計な力がすべて抜けること請け合い。
読者はまず、佐々木倫子独特の
神経質で美しい描線(まあ…これを「いかにも少女漫画風」と評する人がいるのも無理からぬことです)によって虚構世界に引きずりこまれ、つぎに
その美しい描線と静的でシニカルな世界観との大きな落差にハートをぐっと掴まれる。
「漫画なんて読まんっ」という御仁にこそ、本作をお薦めしますね。この『動物のお医者さん』では、「漫画」につき物の恋愛・暴力・アンチリアリズム・お涙頂戴・大袈裟なストーリー展開がない代わりに、作者の綿密な取材による
「獣医学部のリアルな平凡」が、虚実とりまぜながら淡々と描かれております。ぜひに。
* * * * * *
地震、、秋田も揺れました。明日東京に帰る予定なんですが、新幹線動くかなあ。