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かの猶太人に酔えるもの

かの猶太人に酔えるもの_c0060659_1883533.jpgガリー・ベルティーニのから早5カ月。
追悼盤になってしまったのが本当に悲しいのですが、ついに彼のマーラー全集を購入いたしました。「最良のマーラー」「美の美」と絶賛されながら、EMI国内盤のみの販売という形態が枷となり、もはやどこへ行っても入手することができなかった幻の全集。。どういうわけか全集の前半、《巨人》〜5番だけは仏EMIから分断リリースされておりましたが、まとめて揃えたいのがヲタの本懐というわけで。東芝EMIの英断に一縷の望みを託して待ち続けていたのでした。

いまどき珍しい重厚な黒の化粧箱、大写しになったベルティーニの姿に在りし日の思い出を重ねつつ、まずは《大地の歌》を聴いてみる。


いままで自分はこの曲の何を聴いていたんだろうなあ。

正直な話、録音された音楽というのは、実演の持つ本質性の7掛けコピーにすぎないと僕は思います。でもこの音盤に残された情報には、確かに実体を感じる。ホールの席に座ってベルティーニの音楽を包まれているときに感じた、あの煌めくような圧迫感が、このCDには記録されています。
恣意的なテンポを排し、最上のバランスで淡々と鳴るマーラー。この音響の異常な美しさは言葉にできない。許光俊があちこちに書いている紹介記事(こことか)が胡散臭いと思う方、彼は(少なくともそこでは)本当のことしか言ってませんです。第5楽章で「der Vogel singt...und lacht」とテノールが万感の思いで歌う箇所、、ここのVnとFlの官能的で幸福な姿態には、恥ずかしながら落涙いたしました。ええ。あのみなとみらいの演奏会を思い出します。そして第6楽章最後の数分の、なんと満ち足りた温かさ!

これから、座右に置いてずっと聴いていこうと思うのです。
by Sonnenfleck | 2005-08-24 19:29 | パンケーキ(20) | Comments(10)
Commented by はろるど at 2005-08-25 01:15 x
こんばんは。
ベルティーニの一連のマーラ録音の中では、
8番と9番が特に好きです。
8番はこの録音にたどり着くまで、
最後まで聴き通すことができませんでした。
もうこれなしには聴けません!

価値ある録音が再発されて良かったですよね。
これは私も「買い」だと思います。

それにしてもベルティーニの演奏会には何度も足を運んだのに、
マーラーを聴かなかったのは馬鹿でした…。
後悔してます。
Commented by Sonnenfleck at 2005-08-25 14:10
>はろるどさん
昨日の夜、《大地の歌》のあとに8番も聴いたのですが、世評に違わぬ素晴らしさに大袈裟ではなく腰を抜かしてしまいました。今までなんとなくぼんやりと聞き流してきたこの曲の静謐な部分が、明晰なかたちを得てバンバン飛んでくるというような感じ(語彙が…^^;;)。これから秋にかけてじっくりと聴き込んでいこうと思います。

都響との演奏はマーラーの凄さばかりが伝えられがちでしたが、ブラームスとかラヴェルも思い出深いですね◎今度fontecから発売される《ドイツ・レクイエム》が楽しみです〜。あの最後のマーラー9番も発売されるといいんですが…
Commented by iustitia at 2005-08-25 17:13 x
先月発売された、ウェーベルン「夏風の中で」も良かったですよね。
http://www.toshiba-emi.co.jp/classic/release/200507/toce13134.htm
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0009OAU1G/
Commented by Sonnenfleck at 2005-08-25 22:26
>iustitiaさん
あれ、実はまだ買っておりませんf(^_^;) 国内盤はまたいつ廃盤になるかわからないし、、それでなくても数少ないベルティーニの正規録音…早く入手せねばですね。
Commented by mitsukoviola at 2005-08-25 23:21
こんばんわ。ベルティーニさんの記事があったので、!と思い書き込みしました。
私も、都響・みなとみらいホールでの演奏会、7番・8番・9番と聞き、深く感銘受けました。忘れられない演奏会です。

未だに余韻があって、なんとなく録音聴く気にならなかったのですが、この記事読んで、CD買ってみようかな、そんな気になりました。
Commented by Sonnenfleck at 2005-08-26 22:01
>mitsukoviolaさん
私も余韻が残ってます。
いまだに9番は、あのベルティーニの印象を崩したくないので、もう実演で聴かなくてもいいかな…という気持ちは確かにありますね。

あっ、でもこの全集はぜひお聴きになってみてください!以前、彼の《大地の歌》を都響で聴いたとき、曲を弾いている楽員が感動しすぎてて(きっとこういうことってあると思うんですが)、ベルティーニが狙っている以上にエモーショナルな様相になっていたように思ったんです。そういう意味では、この全集の中の《大地の歌》は理想的な厳しいフォルムが維持されていて、非常に好感が持てます◎
Commented by yurikamome122 at 2005-08-28 01:18
今まで何度となくあちこちで書きましたが、ベルティーニの「大地の歌」は泣けました。MMホールでの都響の演奏会でした。演奏が終わって少なくとも30秒、会場の静寂。その後のもの凄い拍手。いや~、私も感動でした。「告別」があんなに寂しく悲しくむなしい音楽だったとは。帰りがけに勢いで8番と9番のチケットを衝動買いした愚か者ですが、とにかく凄かった。
Commented by Sonnenfleck at 2005-08-31 15:53
>yurikamome122さん
お返事遅れて申し訳ありません。山奥から帰ってきました。。

あの都響マーラー・ツィクルスが無事に完結し、そして自分がそのいくつかに立ち会うことができたのは、まさに僥倖としか思えないですね。あのとき、《大地の歌》や9番の終わりに訪れた「濃い」静寂は、一生忘れられないと思います。
Commented by iustitia at 2005-11-09 00:36 x
ついに9番が発売ですね。

http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1429301
Commented by Sonnenfleck at 2005-11-09 19:02
>iustitiaさん
お蔵入り、との噂も聞いていたのでひとまず安心ですが、おそらく買ったところで一生開封できないと思います…(情けない)。非常に美化されているところの「記憶」と比べるのが怖いです^^;;
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