大野和士/ベルギー王立歌劇場管来日公演:幸福な午後の蜜月

c0060659_21432921.gif【2005年9月25日(日)16:00〜 横浜みなとみらいホール】
●ラヴェル:《ラ・ヴァルス》
●同:《シェエラザード》
→エレーヌ・ベルナルディ(S)
●同:《ボレロ》
●R=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》
 ○アンコール 同:同〜第3曲〈王子と王女〉


この曲目が発表されたとき、正直「なんつう自信たっぷりの選曲だー」と思ったんです。
でも1曲目の《ラ・ヴァルス》から完璧に度肝を抜かれたですよ。
う、巧い…このオケは巧い。オケプレイヤー個々人のポテンシャルが非常に高いんです。しかも大野の指示が隅々まで完璧に行き届いていて、ちょっとしたアゴーギクがどんどん決まっていく。大野は弦楽の高圧的なきらめきを極力抑えて(これがこのオケの音か?くぐもったような、高音がぎらつかない安心感)、そのかわり管のシャープさを強調、つや消し風の弦楽の雲間からスパッと雷光が射すような快感をホール中に行き渡らせてしまいました。立ち上がりからこの加速はいったい何なんですかと。

ベルギー人ソプラノのベルナルディを迎えて、2曲目はラヴェルの《シェエラザード》。
第1曲の「Asie...Asie...Asie...」という吐息のような歌い出しに、雰囲気は一気にエロラヴェルです。劇場のオケだから、というのはあまりにも単純な物言いかもしれないけれど、それにしてもこの多彩な表現力。そして大野の情熱的な味つけ。熱風がうねるような情感です。ラヴェルの書いたソプラノパートは決してオケの中から突出するようにはできてないのですが、声を埋没させない十全なテクニックも本日の聴き所でした。

前半最後はなんと《ボレロ》。いやはや…なんと危なげのない。奇を衒わない正攻法で積み重ねていくのは、オケの音色と技量に自信がある証拠です。たいていの演奏では管だけで1→30を描いていって、中間部のVn軍団登場で一気に30→60ぐらいまで上げちゃうところを、大野はあくまで大きなクレッシェンドを意識。30→45くらいに抑えます。そのぶんトゥッティで80くらいに差しかかると、なだらかで自然な盛り上がりが形成されるのでした。ああソロTbが巧い。

後半はリムスキー=コルサコフの《シェエラザード》。
この曲をしっかり聴くのは実に3年ぶりくらいなので細かな点は言及できませんが、まさにイメージどおり、絢爛豪華。でも響きが溌剌として脂っこくならないのは、やはり大野とオケのリズムのキレのよさ/しつこい表情づけに拘らない思い切りのよさによるところが大きいでしょう。
注目のソロVnはコンミス女史。ややきつめのキャリアウーマン風の歌い回しで、清潔感を漂わせます。また今日気づいたんですが、この作品では「ソロVc」がクレジットされてもいいくらい、実はチェロ首席も大活躍してるんですね。ソロVnとの掛け合いの妙味、そしてそれに絡むいくつもの木管。
大きな歓声に応えてアンコールに第3曲をまるごと。連休最後の夕方、物凄い完成度の音楽を目の前にしてゆったりした気持ちで過ごすことができました。耳福耳福。
by Sonnenfleck | 2005-09-25 23:00 | 演奏会聴き語り
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