鈴木秀美・バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会◆第2夜:静かな音楽

【2005年9月30日(金)19:00〜 フィリアホール】
●バッハ:組曲第2番ニ短調 BWV. 1008
●同:組曲第4番変ホ長調 BWV. 1010
●同:組曲第6番ニ長調 BWV. 1012
 ○アンコール 同:無伴奏Vnソナタ第2番イ短調 BWV. 1003〜第3楽章アンダンテ
→鈴木秀美(Vc, Vc-piccolo)


あれからもう4週間ですか。困ったなあ(笑)
ちょっと風邪気味で頭がぼんやりしてるんですが、9月2日の第1夜に引き続き、全曲演奏会第2夜へ行ってきました。個人的に無伴奏Vc組曲は偶数番号のほうが好きなので昨日はうきうき。

第2番。
この組曲は全体に溢れる悲劇性をどう捉えるかによって感じが変わるし、やっぱり第4曲サラバンドをどうするかが最大の聴きどころです。一昨年ロストロがドヴォルザークのVc協奏曲のアンコールでこのサラバンドを弾いたときは、拍手も憚られるようなどん底ずぶずぶの歌い方にすっかりKOされたし、また一方でウィスペルウェイのCD録音のようにあくまで重音の響きとトリルを楽しむこともできる。昨日の秀美氏はしかし淡々としてダンディ。速めのインテンポで颯爽と駆け抜けます。これもいいなあ。

第4番。
風邪薬のせいか情けないことに意識が飛び飛びになってしまったのでコメントは控えます。でもちょっと弓のノイズが多めだったような記憶があるんですよね。6曲のなかでこの組曲がいちばん嬉遊的なイメージなんですが、ボウイングでわざとそうした語り口の多彩さを演出していたのか…?

眠気を振り払うために休憩中ロビーを歩き回り(-_-;) 後半は第6番。
ここで楽器が普通のバロックVc(1570年・アマティ)から5弦のVcピッコロ(18世紀後半ドイツ・作者不詳)に変わります。実物を目にするのは初めてですね。糸倉がちょっと長くて、指板の幅が広く、全体的にVcよりほんの少し小さい。左端に追加された最高弦のE線は(CDで聴いてた以上に)ヴィオラ・ダ・ガンバめいた音がしていて驚きです。しかしなんと気難しいガット弦!簡単に狂う調弦に秀美氏も四苦八苦といった様子。各舞曲の間、さかんに調弦し直しておられました(前半のバロックVcのときはほとんどされてませんでした)。
昨日あの演奏で第6番に目覚めましたよ。なんて美しい…。元来ニ長調が好きな自分ですが、今の今までこの曲の完成度の高さに気づかなかった。第1曲プレリュードの最初で演奏を一旦止めてやり直すというハプニングがありましたが、そのあと尻上がりに調子が上向き、頂点は第2曲アルマンド。至純の静けさでした。涙で視界が霞んで仕方なかった。彼のボウイングの神業的テクニック、そしてVcピッコロだからこそできる美しい分散和音、しなやかな移弦、深い重音、多声展開の聴き取りやすさ。まさに「語り」としての音楽の最高峰だったと思います。

満ち足りた拍手。「Vcピッコロはこの曲のためにしか使われません。そのためアンコールにはいつも借り物競走をしなければ、、同僚からいつも叱られていますがこの曲を…」と軽妙なトークののち、無伴奏Vnソナタの第3楽章をアンコール。あの楽章が一定のオルゲルプンクトの上で展開していることに初めてちゃんと気づきました。素敵なおまけに大満足◎
by Sonnenfleck | 2005-10-01 23:16 | 演奏会聴き語り
<< 黒船キタコレ。 アジアのキュビスム展@東京国立... >>