小澤征爾/N響:<こどものためのプログラム>

c0060659_20111625.gif小澤のコンサートはいつも高すぎて到底聴けるもんではなく(そしてそんな高額でも瞬く間に売り切れてしまうので)、実は彼の実演を聴くのはこれが初めてだったりします。しかも相手が因縁のN響とあらばテンションも上がってしまいますね!

上がってしまいますか?

【2005年10月27日(木)19:00〜 NHK音楽祭2005/NHKホール】
●ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 Op. 67
●ガーシュイン/マーカス・ロバーツ編曲:Pf協奏曲ヘ調
→マーカス・ロバーツ・トリオ
 マーカス・ロバーツ(Pf)、ローランド・ゲリン(Bass)、ジェイソン・マルサリス(Drums)
●千住明:《日本交響詩》(2005、NHK放送80周年記念委嘱作品・初演)


どうですこのプログラム!
チケットを買った時点ではベートーヴェン5番と《ラプソディ・イン・ブルー》だけだったんですが、その後プログラムは変更され、しかも思わぬ伏兵の登場となりました。そっかあ…小澤+N響+千住なんて一生に一度の経験だろうなあ…なんて考えながら開演前にプログラムを眺めておりますと、年端もいかぬお子さま方が歓声を上げながらそこらへんを走り回っているのが目に入ります。これは「こどものためのプログラム」なんだよ?我慢しなさいよ自分?

小走りに小澤が登場し、万雷の拍手。1曲目。
冒頭の4音モチーフを二回繰り返して…あれ、、休符がすげえ長いぞ??フルヴェンっすか??と思ったら、小澤がくるりとこちらへ向き直って「…とまあこんな感じです」とスピーチを始める。4音モチーフが曲中に潜んでいることを楽しく説明しつつ、楽器の違いについて解説し(「堀さん(コンマス様!)と店村さん(Va首席)並んで楽器挙げてみて!」には笑ってしまった^^)、会場を盛り上げます。この辺は本当にすごい人だなあと恐れ入りました。いつもこういうことをやっておられるからでしょう、教育プログラムへの戸惑いが全然ない。
演奏自体にも、驚かされましたですよ。
Kb8本の巨大な編成でどう料理するのかしらんと思っていましたら、本当に何も起こらないのです。重いソースも、軽妙なスパイスもなく…塩ゆでと言ったらいいんでしょうか、出過ぎた味つけは一切なしに、こちらの予想をまったく裏切ることなく、堂々として苦悩から歓喜に至ってしまいました。これが名高い小澤の「スーパードライ(マルC宇野功芳)」なんでしょうか。確かに非常に丁寧でキレイなテクスチュアで、ここまで清純に、滑らかにベートーヴェンを聴かせるのがどれほど難しいか、敬服します(皮肉でもなんでもないですよ?)。これが彼の個性なんでしょうね。素直に拍手したい。

後半は指揮台の横にピアノ、ベース、ドラムが登場。それらの音を拡大するスピーカーも用意され、お堅いファン(とかコンマス様!)を怒らす準備はばっちり整いました。
マーカス・ロバーツによる編曲はかなり自由なもので(まさに「ガーシュインに基づくインプロヴィゼーション」)Pfソロに絡むベースとドラムのノった感じは、「美しく整った」前半との違いを際だたせる。ジャズは聴かないんでよくわからんのですが、きっとスマートなプレイだったのだと思います。見ていると小澤の指揮は実に気持ちよくリズムにノっているのですが、オケのほうは自在に伸縮するソロパートに辟易といった様子もチラリ。でもN響のベッタリ甘々な様子を聴けたのは収穫です(思ったよりギチギチしていない)。

最後は千住明の新作。
ものすごくベタな民謡コラージュ(…ですらないか。ところどころちょっとだけ大胆な和音を作ったりしていますが、基本的に「NHKみんなの童謡」路線)です。《故郷》《最上川舟歌》に始まり、《花笠音頭》《佐渡おけさ》《ソーラン節》《五木の子守歌》…《てぃんさぐぬ花》で日本列島の南北に気を遣い、《金比羅船々》《阿波踊り》と。最後は「NHK歌謡コンサート」ばりに客席がライトアップされ、こちらを向いた小澤の指揮で《さくらさくら》の大合唱
ああ…両隣のおばあちゃんも向こうのガキもみんな歌ってるよ…

、、追風に帆かけて シュラシュシュシュ(ボソ)
by Sonnenfleck | 2005-10-28 20:21 | 演奏会聴き語り
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