二期会+デ・ワールト/読響 《さまよえるオランダ人》

「ポリーニ・プロジェクトⅡ」行ってきましたが、とりあえず今日はこちらの感想で。

c0060659_23323333.gif【2005年11月2日(水)19:00〜 二期会・ハノーファー州立歌劇場共同制作(プレミエ)/東京文化会館】
●ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》
→多田羅迪夫(Br、オランダ人)
 長谷川顕(Bs、ダーラント)
 エヴァ・ヨハンソン(S、ゼンタ)
 青柳素晴(T、エリック)
 西川裕子(Ms、マリー)
 経種廉彦(T、舵手)
 二期会合唱団
渡辺和子(演出)
→エド・デ・ワールト/読売日本交響楽団


《オランダ人》の新演出です。(以下ネタバレ注意)
舞台は濃紺を基調としてかなり暗く、奥へ行くにしたがって高くなる。前景には船体を模した横長の閉ざされた部屋(客席のほうを向いて等間隔に船窓が並ぶ)、中景には演技のための広めの空間があり、後景には柱廊状の通路。また中央下手には唯一スポットライトを浴びてオランダ人の木製胸像とL字型ソファ。

第1幕
・序曲の間、奥の柱廊をゆっくりと歩くたくさんの人影。(→オランダ人の船員たち?暗くて判別不可)
・没個性的な黒いユニフォームを着て、ダーラントと彼の船員たちが走って登場。さも何かありげにもやい綱を全員で舞台下手から曳いてくるが、果たしてその先には船を示すものなし。
・舵手、歌いつつ手前の船室に入り込む→これってオランダ人の船じゃないの!?(船窓からは内部の不気味な人影と赤い照明)
・黒衣のオランダ人登場。手に持った銀のアタッシュケースには山のような札束(束というよりバラか。わざとぶちまけてヒラヒラと舞わせる)。これを見たダーラント、わざわざ契約書を書かせて小物ぶりを大いに発揮

第2幕
・手に杖状の糸車を持った白衣の女工たち。白衣に紺のタイトスカート+黒縁眼鏡+ショートカットのマリーは鬼の現場監督といったところか。糸車の回し方をきつく指導しつつ、糸車の合唱。
・やはり白衣のゼンタは、オランダ人の木像に仕上げのヤスリをかけることに夢中。
・ゼンタのバラードの間、マリーの苦悶が甚だしい。オランダ人の木像を見つめる姿が生々しかったり、乳母にしてはあまりにも若い造形から、マリー自身のオランダ人への憧れを感じ取るのは深読みしすぎですかそうですか。
・エリックはスマートな白衣でマリーと同じ格好。二人の愁嘆場は普通。そこへダーラントとオランダ人登場。へこへこと動き回るダーラントの卑しさが強調される。だが惹かれ合う二人の演出はきわめて普通。

第3幕
・船員と女工の宴会…ところが突然ライトが下品な紫色になり、女工たちは全員ブロンドのカツラと派手な衣装をつけて、脚をチラチラ見せつけながら練り歩く。派手に飲み食いしつつ、おひねりを渡して囃し立てる船員たち。→これでセックスシーンが入ったりしたらコンヴィチュニーですね(笑)
・ここで大変なのは、合唱団員たちに「声はオランダ人の船員、演技は恐怖におののくダーラントの船員」が要求されることですよね。二群に分けないことでダーラント側の視覚的な「大人数さ」を確認できるのはありがたいですが。
・で、ゼンタの自己犠牲です。どうするかなあと思ってわくわくしていたら、誰もいなくなった舞台で大事にしていたオランダ人の木像をぶっ倒して後景の柱廊に消えるという表現でした。普通に見れば、現世での形ある肉体の愛→形のない永遠の貞節へ、みたいな感じなのでしょうかねえ。でも柱廊に消えたあと彼女は特に何もしないんで(岬から身を投げたりはしない)、結果的にオランダ人への愛そのものの否定にも見えちゃって、よくわかりません。

全体としては、下手な読替えはしないし、煩わしい小ネタを振りまくこともない、高品質かつまっとうな演出だったと思います。日常的にこのレベルが見られるのなら十分に満足。ブーは不当です。

* * * * * *

歌手。エリック役の青柳氏は発声がよくていかにも純粋な若者らしく気持ちよかったですが、ほかに飛び抜けて完成度が高い人は見あたりませんでした。ゼンタ役のヨハンソンは演技・歌唱ともにちょっと大味だったかなあと思います。なんだかバタバタしてて。それに「すっかり声がかすれてしょぼい」オランダ人役の多田羅氏への盛大なるブーも、残念ながら妥当。。
いっぽうでデ・ワールト/読響、そして二期会合唱団には、この日いちばんの拍手を。うねるような序曲の快感に始まり、嵐の合唱、糸車の合唱、第2幕オランダ人とゼンタ邂逅での「全曲中もっとも不気味な音楽」の緊迫感など非常によかった。両者共にムダのないタイトな響きで劇を牽引し、休憩のない2時間半の長丁場を忘れさせてくれました。読響は本当に上り調子だなあ。
by Sonnenfleck | 2005-11-03 23:35 | 演奏会聴き語り
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