【2005年12月2日(金)19:00~ 第576回定期演奏会/サントリーホール】
●プロコフィエフ:交響組曲《3つのオレンジへの恋》Op. 33bis ●同:Pf協奏曲第4番変ロ長調 Op. 53 ○アンコール シュールホフ:《第3組曲》~〈アリア〉 →舘野泉(Pf) ●同:交響曲第5番変ロ長調 Op. 100 ラザレフを初めて聴いたのは二年前、同じく日フィルを振ったショスタコ11番であります。あのときの11番は本当に神懸かっていて、第2楽章の「機銃掃射」の凄惨さは言うに及ばず、第3楽章では、ここを聴かずにどこを聴くと言わんばかりに〈同志は倒れぬ〉の主題をなんと90度客席の方を向いて指揮するという妙技を披露。かといって受け狙いや勝手気ままな自己陶酔に浸るのではないのがこの指揮者の並ならぬところで、瞬間瞬間の「響きの主役となる音符/リズム」をほかと区別して明確に示す方法を彼は知っている。(*ただ、自分に求められているポジションに敏感なんでしょうか、いささか低音+金管重視気味ではあります。) オールプロコで客席が埋まるか謎でしたが、やはり入りは六割弱というところ。 3つのオレンジ組曲はほんの挨拶がわりといった感じで、あいかわらず楔を打ち込むかのように金管をきつく鳴らしながらもぶよぶよすることなくタイトにまとめる。 続いては舘野泉氏をソロに迎えて、左手のための第4協奏曲。 ご存じのように舘野氏は脳梗塞で倒れたのちリハビリを重ね、左手のピアニストとして楽壇に復帰してメディアの注目を集めているかた。倒れる前に録音したセヴラックやグリーグなど晴朗で清潔で非常に好きでしたが、、残念ながらこのプロコフィエフにかつての輝きはなかったですね。まさにヨレヨレという表現がぴったりで、細かい音符の音価がかなりいい加減になってしまっているためオケとはことごとく合わない。まずいことにタッチも平板でさすがにショックでした…。 しかし会場は割れんばかりの拍手喝采!なんということだろう!障害のある演奏家が弾ききったことへの同情?そうやって批判を避けるというのは彼に対して本当に失礼なことじゃないのか?でもアンコールのシュールホフのゆったりした美しさは、彼が表現者として終わってしまっているのではないことを力強く証明していました。清潔な叙情味は健在。 後半は第5交響曲。 第1楽章は尊大さを感じさせるまで大風呂敷を広げまくります。偉大な歩みを崩すことのない、まるでブルックナーのような(!)プロコフィエフ。もともと5番はそういう属性「も」持つ作品だし、ここまで思い切りやってくれると気持ちいいですねえ。全曲通してのバスClとコントラFgの著しい強調もただの思いつきという感じではなく、あえて偉大な鈍重を狙うのには効果的。またこの楽章ではVaの意外な対旋律に焦点を当てる操作が頻繁になされて、非常に興味深い。 第2楽章の驚きポイントはピアノの扱いですね。つい奏者にリミッターがかかって旋律楽器っぽく上品にまとまることが多いピアノも、ここでは理性を捨てて強力な打楽器に変身。あいかわらず低弦を効かせて重い響きですが、そこから浮かび上がるウッドブロックのリズムが完璧で、全体をきりりと引き締める。 第3楽章だけは、ちょっともたれました。。緩急がほとんどつかず、大蛇がずるずると横を通り過ぎるのをじっと待つカエルの気分。 ただそのぶん終楽章の開放感はまさに快感であります。コーダでは、咆哮するTbの上でやはり打楽器が完璧なリズムを刻んでいるのを気持ちよく聴きながら、なおかつトゥッティの弦楽の正確さに舌を巻く(たぶんこれは本当にすさまじい練習をした成果だと思う。コーダのリズムが狂ってる演奏はスタジオ録音でもざらにあります)。 実演でここまでの5番が聴けるとはゆめ思いませんでした。こんなに実力者のラザレフがいいポストに恵まれないのは、、練習の苛烈さにありそうな…そんな邪推。
by Sonnenfleck
| 2005-12-05 19:26
| 演奏会聴き語り
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