中野振一郎/コレギウム・ムジクム・テレマン:谷間のいろいろ

【2006年1月20日(金)19:00~ 第168回定期演奏会/東京文化会館】
●モーツァルト:Cem協奏曲ニ長調 K. 107-1
●ヨハン・クリスティアン・バッハ:Cemソナタト長調 Op. 5-3
●モーツァルト:Cem協奏曲ト長調 K. 107-2
●モーツァルト:Cem協奏曲変ホ長調 K. 107-3
●ゲオルク・ベンダ:Cem協奏曲ト長調
●フランティシェク・クサヴィル・ブリクシ:Cem協奏曲ヘ長調(日本初演)


これまで何かと都合が悪く足を運べずにいましたが、チェンバリスト中野振一郎氏率いるコレギウム・ムジクム・テレマンはぜひ一度聴いてみたい団体でありました。今回は(ここでも!)モーツァルトイヤー企画ということだったんですが、実は取り上げるモーツァルトはすべてクリスティアン・バッハのモーツァルト編曲作品ということで、スパイスが利いております。しかもベンダ!こりゃあ行かにゃならんべぇーと、雪の予報が出ている中、上野へ。

前述のようにK. 107の三曲は、モーツァルトがクリスティアン・バッハ (1735-1782) のCemソナタをCem協奏曲に編曲したものです。いずれも編成は1stVn、2ndVn、Vc、Cemが一人ずつという極小のもので、中野氏による解説では、モーツァルトが旅先での急な演奏依頼に応じてその場で用意できる小さな編成に仕立て上げた可能性がある、とのこと。
Vaがいない穴をどう埋めるかがいちばんの聴きどころですが、うまいことに2ndVnに低音を分配して内声を弾かせてるんですよ。原曲のト長調ソナタとモーツァルト編曲のト長調協奏曲が比較可能なように並べて演奏されたのはうれしかったですねえ。特にこのト長調ソナタは2楽章が長大な変奏曲になってて、モーツァルトのオーケストレーションの色彩感覚を体験するのにはもってこい。Cem独奏の原曲からここまで鮮やかな編曲をするのか…と驚かされる。

休憩後VaとKbが加わり、ベンダの協奏曲。
ベンダ作品は昔FMでメロドラマ《ナクソス島のアリアドネ》を聴いて以来(あれはドイツ語の台詞が理解できないと面白くないっす)ですが、この協奏曲は非常に親しみやすい。もっと言えばいかにもフリードリヒ大王が好みそうなクヴァンツ似のスタイルで、まだバロックしてますよ。明るい旋律美や技巧的な通奏低音など作品のレベルも非常に高くて、もっと注目されてしかるべき曲だと思います。バロクーな自分としては非常に安心(^^;) …逆に前半のクリスティアン・バッハの先鋭的な古典派ぶりが強調された格好ですね。

最後のブリクシ Brixi (1732-1771) は当時チェコで絶大な人気を誇ったオルガニスト・作曲家とのこと。当時モーツァルトはプラハで人気を博していましたが、その賛辞の中に「ブリクシ的なわかりやすい音楽を挿入していた」というものがあったらしい。そんな作曲家です。
しかし…ものすごく凡庸な作品に聴こえたのは、このエピソードを読んだせいではないだろうなあ。まったくつまらない、、低弦のしつこい同音連打、四角四面な転調、1stVnの偏重など、古典派協奏曲の教科書を読んでるみたいな。今ではすっかり忘れ去られてるのもむべなるかなという感じです。

コレギウム・ムジクム・テレマンは、「非常に真面目で」かっちりとしたアンサンブルでした。安心できますが、中野氏のけっこう大胆なアーティキュレーションにはほとんど反応なし…というのが悲しいですね。一人相撲みたいで少し寒いです。ともあれ、今回はまさに企画力の勝利!こういうひねくれた(笑)演奏会、大好きです。
by Sonnenfleck | 2006-01-21 11:05 | 日記
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