新国立劇場《魔笛》再々演

c0060659_11365693.jpg【2006年1月28日(土)15:00~ 新国立劇場】
●モーツァルト:歌劇《魔笛》
→アルフレッド・ライター(Bs、ザラストロ)
  ライナー・トロースト(T、タミーノ)
  長谷川顕(Bs、弁者)
  佐藤美枝子(S、夜の女王)
  砂川涼子(S、パミーナ)
  諸井サチヨ(S、パパゲーナ)
  アントン・シャリンガー(BBar、パパゲーノ)
  高橋淳(T、モノスタトス)
  三澤洋史/新国立劇場合唱団
  他
→ミヒャエル・ハンペ(演出)
→服部譲二/東京交響楽団


まったく何の捻りも加えない、オーソドックスをショーケースに並べたような演出。
夜の女王はちゃんと電飾をまといながら空中に吊るされて登場するし、パパゲーノは相変わらず黄緑の羽を生やしているし、モノスタトスは嫌なムーア人なのですよ。下品に陥らない、あくまで趣味のいい演技指導。よーしパパゲーノに日本語喋らせちゃえ。Ja, mein Engel!で笑わせてやれ。ザラストロは最後までかっこよく見せてやれ。
いちいちシニカルに揚げ足を取って問題提起するだけが芸術の役割ではないのだし、健康な精神を持った老若男女が24時間のうち3時間をニコニコと明るく楽しく過ごすためにはもってこいのすばらしい出来/いやぁ~、オペラって、本当にいいものですねぇ!/…。

歌手たちもこれに合わせたかのような凸凹のない仕上がりで、打ち震えるような熱唱がなかったかわりに、耳をふさぎたくなるような大破綻もありませんでした。佐藤美枝子は初め3人の侍女より声が小さくてドキリとしましたが、徐々に復調。今回もっともよかったのはパミーナの砂川涼子でしょうか。パパゲーノのシャリンガーとザラストロのライターは安定感があって一安心。しかしタミーノのトローストは陰影のない軽薄な歌い口でがっかり、、どの場面を取り出しても同じように聴こえるってのは問題だと思いますよ。

(*一箇所、第1幕第8曲でモノスタトスがNur geschwinde! Nur gescuwinde!と言ってパミーナとパパゲーノを後ろから捕まえる場面。普通ならばHa!と叫ぶところ、鞭を持った高橋淳は「ふうぅーーーぅ!」と「例のポーズ」つきでやってくれまして、何%かのお客は確実にどよめいた。高橋淳のそういうキャラクタ、僕は大好きです。)
(**冒頭の「大蛇」、なかなかのグロデザインでした。『寄生獣』「...ぱふぁ」を思い出したのは僕だけではない、でしょう。)



しかし今回の公演の指揮は、本当にひどい。涙が出る。
どうすればあんなに死んだようなモーツァルトを演奏できるのか、ぜひそのコツを本にまとめて出版してほしいですね。彼が修得している指揮の秘術はとうてい僕などが考えうるようなものではないと思いますが、どうも彼がすべてのリズムを後ろへ後ろへと倒すせいで、オケの皆さんは常に発音がおっかなびっくり。クソ真面目な刻みとしつこいリタルダンドに拘って動かざること山の如しの伴奏に対して、歌手のほうが歌を合わせる始末ですよ(普通、どんなオペラでも指揮者は歌手のテンポに合わせようとするじゃないですか。彼は悠然と構えたまま本当に何もしない。驚いた)。パパゲーノは最後までテンポが合わなくて本当に気の毒。服部さん、悪いことは言いませんから指揮のお仕事に関してはもう少し考えてからにしてください。本当にお願いします。
by Sonnenfleck | 2006-01-29 14:02 | 演奏会聴き語り
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