中野振一郎/コレギウム名古屋:4台揃えば牙を…剥かない

c0060659_1073262.jpg【2006年5月20日(土)19:00~ 第29回コレギウム・ムジクム/電気文化会館ザ・コンサートホール】
●モーツァルト:2台のCemのためのソナタハ長調 K.19d
→藤井義子、徳田あつ子(Cem)
●同:Cem協奏曲変ホ長調 K.107-3
→藤井義子(Cem)
●バッハ:3台のCemのための協奏曲ハ長調 BWV.1064
→中野振一郎、藤井義子、徳田あつ子(Cem)
●同:Cem協奏曲イ長調 BWV.1055
→中野振一郎(Cem)
●同:3台のCemのための協奏曲イ短調 BWV.1065
 ○アンコール 同:BWV.1065~第3楽章
→中野振一郎、藤井義子、徳田あつ子、澤田知佳(Cem)
⇒コレギウム名古屋:大竹倫代・神戸潤子(Vn)、杉山光太郎(Va)、
             太田一也(Vc)、古橋由基夫(Kb)


ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン(withヒラリー・ハーン)の名古屋公演とバッティング!散々迷った挙句、バッハの1064と1065を生で聴ける機会はそんなにないのでこっちを選びましたよ。
…しかし大誤算。用意されたチェンバロはタスカン×2とブランシェのフレンチが3台と、ミートケ(ジャーマン)が加わった計4台ということでしたが、ピッチはモダン、中野振一郎と弦楽合奏はあくまでサロンのゲストであり、主役は楽器を所有する半アマチュア?のおばあちゃんでした。。アマチュアの批評は難しい。気を遣う。でもどうしても我慢ならないのでちょっとだけ。

決して少額ではない金を取る以上、それに見合う責任が発生していることを忘れるべきではないと思うのです。明らかな練習不足を聞かされちゃこっちだってたまったもんじゃない。
1064では2ndCemを担当した彼女が速いパッセージを弾くことができず、慌てて1stCemの中野氏が指揮するも及ばずアンサンブルがぐちゃぐちゃにずれて、空中分解(よく演奏が止まらなかった)。いわゆる「スリルだとかライヴ感だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」というやつです。なんで僕はコンサートホールの椅子に座って冷や汗かいてるんだと。

* * *

しかし中野氏がソロを務めた1055に関して言えば、、これは手放しで名演なのでした。
1月に東京で彼の演奏を聴いたときも感じたんですが、中野氏のような魔術的アーティキュレーションのことを天才肌と呼ぶんじゃないかなと。いかにも軽く、楽しそうにコロコロと表情を変え、聴衆を幻惑する、そういう音楽を苦もなく作り上げる人なんだと思います。

前半の1064ではその奇才が自分を抑えに抑えて、1stCemなのにサポートに回るという痛々しい転倒が起こっていましたが…オモリから解放された後半の1055では弦楽合奏(*)とともに高いところに舞い上がって、拍の自由な伸縮と軽やかな装飾を伴った素敵な演奏を聞かせてくれます。白湯ばかり飲まされてたところに突然、いとも複雑な味のコーヒーが出てきたような衝撃でありました。
(*弦楽合奏のコレギウム名古屋は、ピリオド語法が徹底された爽やか腕っこき集団。中野氏の自在な呼吸にピタリと張りついていきますよ。特にB.C.の二人はモダン楽器であんな音が出るのかというくらい質朴な美しい響き…感激です。んでプログラムに目を落とすと、全員が名フィルの団員で、かつVa/Vc/Kbの三人は首席!なるほど。)

* * *

最後はまたお遊戯会みたいな1065、しかし客席からは拍手喝采。
この「コレギウム・ムジクム」シリーズは1978年から脈々と続いてきたらしいですが、、そこに形成されたサロン文化は神聖ニシテ不可侵。僕みたいなクラヲタは立ち入り禁止のようです。
by Sonnenfleck | 2006-05-21 10:07 | 演奏会聴き語り
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